研究実績の概要 |
本研究の目的は鉛フリーペロブスカイト太陽電池の高効率化指針の提案であり、より詳細には錫ペロブスカイトを用いた太陽電池の高効率化指針を提案することである。一般にハロゲン化ペロブスカイトABX3で表される。BがPbの場合、Aサイトのイオンサイズによりトレランスファクターが計算され1に近いほど、ペロブスカイト格子のひずみが少なく、太陽電池の光吸収層として優れていると考えられている。我々の目標はBがSnの場合、Aサイトを変えた場合の格子ひずみと光学物性、電子物性、太陽電池性能の関係を調べた。格子のひずみはXRDによりWilliamson-hall plot により求めた。A0.1(FA0.75MA0.25)0.9SnI3の組成式で AサイトをNa+, K+, Cs+, Ethylammonium+ (EA+) and Butylammonium+ (BA+) と変えた。測定された格子ひずみはトレランスファクターとよく一致しトレランスファクターが1に近づくほどひずみは小さくなった。EA, BAを格子に入れた場合にはトレランスファクターは1を超えるがひずみが大きくなるために3D構造は取れず2D構造をとることにより格子ひずみを緩和していることが実測できた。キャリア移動度とひずみは相関がありひずみが小さいほどキャリ移動度が高かった。従って格子のひずみはキャリアの移動を阻害することが分かった。錫ペロブスカイトで問題となるキャリア濃度はひずみとの相関は大きくなかった。効率は格子ひずみとよく相関関係があり、格子ひずみが小さいほど効率が高い傾向にあった。上記組成の場合EAイオンを用いたときに最も格子ひずみが小さく、効率が高くなった。錫ペロブスカイトを用いた太陽電池の高効率化方針として格子ひずみを小さくするほど高効率化できるという指針を提案できた。
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