研究課題
光や熱などの外部刺激によってメカニカルに動く材料は、ソフトロボットなどへの応用が期待されている。私達は光を照射すると光異性化により曲がる種々のフォトメカニカル結晶を開発してきたが、本研究において、結晶を加熱冷却すると熱相転移により基板の上を移動するロボット結晶を開発した。また、熱相転移する結晶に光を当てると、相転移温度よりも低い温度で相転移するという、全く新しい「光トリガー相転移」現象を発見し、その機構も解明した。前年度に、別の結晶に光照射すると、光熱効果によって結晶が素早く屈曲する現象を発見した。本年度は、光熱効果による結晶の屈曲機構の解明を行った。光熱効果は物質の光励起により熱が発生する非常に速い現象である。光熱効果による屈曲は、厚さ方向の非定常な温度勾配により生じると考え、結晶内部の温度勾配を、一次元非定常熱伝導方程式を用いて算出し、屈曲角に変換することにより、光熱効果による屈曲のシミュレーションに成功し、提案した屈曲機構を実証できた。また500 Hzの高速屈曲も達成した。更に新たに、光熱効果による屈曲と同時に、より高速で微小な固有振動が誘起されることを発見した。また固有振動数と同じ周波数のパルス光照射により共振し、屈曲角が大きく増幅されることもわかった。固有振動は物体に外部から力が加わると、一定の固有振動数で振動し続ける物理現象である。これまでのメカニカル結晶の大部分は光異性化に基づいていたが、光異性化は限られた結晶にしか起きない、分厚い結晶は屈曲しない、屈曲が遅いなどの難点があった。光熱効果と固有振動は共にほとんどの物質に起きる現象である。光熱効果と固有振動を用いればあらゆる結晶を高速で動かすことができ、光異性化、相転移では望めなかった多種多様なメカニカル結晶を開発できる可能がある。メカニカル結晶の実用化も見据えた今後の研究の進展が望まれる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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