研究課題
超高分子量樹脂を溶融状態から延伸すると、分子鎖「絡み合い」が応力を伝達して配向化するとともに、解きほぐしが起こって伸びきり結晶化するため、高強度繊維や膜が得られる。一方、シリコーン樹脂等のエラストマー材料も応力を伝達する「架橋」点を有するが、これは延伸しても解消されず、収縮して延伸前の状態に戻る。本研究では、これら分子鎖絡み合いと架橋の相違性を利用することにより、低荷重では柔らかくて数倍まで伸び縮みでき、かつ、それ以上の歪みでは高荷重に耐えられる高伸縮・高強度材料を創製する。さらに、これに電子配線や回路を組み込むことにより、伸縮しても性能が変わらず、かつ、繰り返し使用が可能なストレッチャブル・デバイスを開発し、生体計測分野やロボット分野等に応用することを目指した。高い溶融粘度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)を用いて原反フィルムを調製し、さらに、この上に架橋シリコーンを被覆した。UHMW-PEの溶融延伸においては、分子鎖絡み合いが応力を伝達して均一変形する。同様に、非晶性のエラストマー層でも架橋によって均一変形するため、両層は一体となって延伸された。しかしながら、絡み合いは延伸過程で解きほぐされるのに対して、架橋は残存するため、その違いが歪み解放後の収縮率の差となって現れてアコーディオン構造が形成された。この際、シリコーン架橋とUHMW-PEの配向結晶化を同時進行させて、製膜工程の簡略化と生産性向上を図った。具体的には、UHMW-PEフィルム表面に上記の未架橋シリコーン/架橋剤の混合ペーストを均一塗布後、150℃に昇温して架橋と延伸を一度で行った。この際、一軸延伸のみならず(、二軸延伸も試みる。また、UHMW-PE層/シリコーン層の厚み・比率・層数(表裏の両面をUHMW-PE層でサンドイッチする3層構造等)や延伸比を変えて製膜を行い、これを冷却後、歪み開放によってアコーディオン構造膜を得た。
2: おおむね順調に進展している
想定通りのアコーディオン構造膜が得られている。
今後、「蒸着描画による金属回路形成とストレッチャブル・デバイス化」、「伸縮過程におけるインピーダンス測定」を行って、デバイスとしての繰り返し耐性も評価する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (48件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
分析化学
巻: 67 ページ: 145-151
10.2116/bunsekikagaku.67.145
繊維学会誌
巻: 74 ページ: 44-48
10.2115/fiber.74.P-44
J. Org. Chem.
巻: 82 ページ: 8882-8896
10.1021/acs.joc.7b01165
http://polymer.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/uehara/index.html