研究課題/領域番号 |
17H03110
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桑折 道済 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80512376)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メラニン / ポリドーパミン / バイオミメティクス / 構造色 / 高分子微粒子 |
研究実績の概要 |
鳥や昆虫等に見られる微細なナノ構造に起因する色「構造色」は、毒性を示す色素や顔料が不要で色褪せがなく、従来の色素色を基盤とするインクにはない独特の光沢を有する。このため、構造色を基盤とした次世代インクの開発が期待され、研究開発がすすんでいる。本研究では、自然界での構造色発現機構から着想した、メラニン模倣体「ポリドーパミン」を素材とする新たな形状/組成の複合構造粒子を作製し、構造色を基盤とするインク状色材開発の学理と技術革新に貢献することを目的とする。 我々は、ポリスチレンをコア材料として、人工メラニン層としてポリドーパミンを用いたコア-シェル型の人工メラニン粒子を独自材料として、研究開発を進めてきた。昨年度までの研究で、従来用いてきた真球状の人工メラニン粒子に加えて、楕円体状の人工メラニン粒子を用いた構造発色に成功した。本年度は、粒子屈折率の効果の検証と、媒体置換による構造色制御を目指し、中空状の人工メラニン粒子の作製を行った。厚膜のポリドーパミンシェル層を有する粒子の溶媒処理により、内部ポリスチレンを除去した。各種条件を制御することで、中空構造を維持可能な人工メラニン粒子を得た。得られた粒子の集積体から得られる構造色は、同じ粒子径の中実状粒子と比べて発色が大きく変化することがわかった。 また、人工メラニン粒子表面から、表面開始リビング重合により、ポリマー鎖を付与したヘアリー状粒子の作製も行った。ポリマー鎖長によって粒子分散媒体や構造発色が制御できることがわかった。ポリマー鎖の種類により、各種刺激に応じた色調変化材料への応用などが期待できる。 さらに、作製した人工メラニン粒子の水分散体をインクジェット法により印字することで、極微細領域での粒子配列に基づく構造発色が可能であることを見出した。本成果は、構造色を基盤とするインク状色材の開発に向けて重要な知見と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、人工メラニン粒子のライブラリーの拡充を目指し、従来の真球状と楕円体状に加えて、中空状とヘアリー状の人工メラニン粒子の作製と構造発色に成功した。さらに、インクジェット法を用いた極微細領域での構造発色にも成功し、インク色材開発に向けた重要な知見も得ることができ、おおむね当初の計画通りに研究が推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、インクジェット法による構造色印字の条件を詳細に検討し、実用化に向けた検討を行う。構造発色においては、原料に加えて、構造体を構築する基板も重要となる。より多彩な発色や発色のパターニングなどに向けて、構造発色に最適な基板の探索ならびに表面改質についても検討する。
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