2019年度は非真球状のビルディングブロック粒子を用いて新たな粒子構造体を作製することを目的に以下の内容を行った。 1)非真球状のヤヌス粒子は真球状粒子とは異なる配列挙動を示すことが報告されるなど,新規な微粒子構造体の作製が期待されており,これまでの検討で明らかにしている独自の方法であるシリンダー粒子の作成方法(攪拌法)に真球状のヤヌス粒子を利用して,非真球状のヤヌス粒子を作製することを目指した。その結果,攪拌法によるシリンダー状ヤヌス粒子の作製に成功し,この結果は,粒子の一定方向に剪断応力がかかるという撹拌法のシリンダー状粒子形成メカニズムを支持する結果であることを示した。さらに,構成する高分子の分子量によっての変形度の影響についても検討を行った。 2)配列方向が二次元に規制された微粒子構造体の作製のため,側面にのみポリビニルピロリドン(PVP)がグラフト化した円盤状のポリスチレン(PS)粒子およびポリアクリル酸(PAA)がグラフト化した真球状PS粒子間の水素結合を利用したところ,円盤状粒子の側面にのみ真球状粒子が吸着した構造体の作製に成功した。また,粒子側面にPVP,およびPAAがグラフト化した二種類の円盤状粒子により,円盤状粒子の側面同士が吸着した粒子構造体の作製についても成功し,二次元構造体作製についての指針を示した。 3)側面にのみPVP がグラフト化した円盤状PS粒子の存在下,オルトけい酸テトラエチル(TEOS)のゾル-ゲル反応を行うことで,水素結合の作用によりシリカが円盤状粒子の側面にのみ選択的に積層し,この後PSを抽出することによりリング状シリカ粒子が作製できる。この粒子とリングの内径と同等な粒子径をもつPVPがグラフト化した真球状PS粒子とを混合することで,水素結合を利用し,リング状粒子の内側に真球状粒子が存在する土星状コロイド構造体の作製にも成功した。
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