研究課題
本年度はエバネッセント波励起法を組み合わせた界面過渡吸収分光測定法および界面過渡光電流測定法を開発した。いずれの測定法も既存の測定装置の入射光学系を改造し、エバネッセント波励起による測定を可能にした。界面過渡吸収分光測定法により、界面における高分子半導体の光電荷生成ダイナミクスについて検討した。試料として、台形プリズム上に厚さ約200 nmのポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)膜をスピンコーティング法により作製した。この試料をクライオスタット内にセットし、真空下、種々の温度でポンプープローブ法による過渡吸収分光測定を行った。プリズムに対する励起光(ポンプ光)の入射角は、臨界角より大きな角度(=80°)設定し、プリズム/P3HT界面近傍にエバネッセント波を発生させた。このとき、エバネッセント波の電場強度が1/eになる深さを分析深さと定義すると、分析深さは64.4 nmである。エバネッセント波励起により得られた過渡吸収スペクトルを解析し、自由電荷であるポーラロン(P)の生成速度を温度の関数として評価した。また、入射角を10°に設定して同様の測定を行い、膜内部におけるPの生成速度と比較した。すべての温度において、界面近傍におけるPの生成速度は、バルクのそれよりも小さかった。これは、界面近傍における光電荷の生成速度はバルクよりも遅いことを示している。また、生成速度の温度依存性からバルクおよび界面における光電荷生成の活性化エネルギーを求めた。その結果、界面近傍におけるP生成の活性化エネルギーはバルクのそれより有意に大きいことが明らかとなった。以上のことから、界面近傍におけるP3HTの電荷生成はバルクと比べて抑制されることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定どおりに研究が進行している。
開発した測定手法により、界面近傍における光電荷ダイナミクスの特異性が明らかになりつつある。今後は、当初の研究計画に加えて、原子間力顕微鏡を用いた電流測定やトランジスタ特性評価を並行して進めて行くことにより、高分子半導体の界面極近傍における光電荷ダイナミクスとその制御因子について検討を行っていく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 9件、 招待講演 4件)
Macromolecules
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