研究課題/領域番号 |
17H03123
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
白石 壮志 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40292627)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キャパシタ / 活性炭電極 / シームレス / 耐久性 |
研究実績の概要 |
電気化学キャパシタは優れたパワーと充放電寿命を有する蓄電デバイスであるが、一般的にはエネルギー密度が低く、キャパシタの容量と耐電圧の改善が求められている。耐電圧に注目したキャパシタ電極の開発はこれまでにほとんど前例がなく、キャパシタの高エネルギー密度化・信頼性の更なる向上にとって極めて重要なことである。本研究では、代表的な電気化学キャパシタである電気二重層キャパシタの耐電圧を大幅に改善できる「シームレス活性炭電極」(カーボン粒子同士の接触界面が存在しない構造体)に注目した。高電圧充電に伴う容量劣化メカニズムを解明しつつ、シームレス活性炭電極の細孔構造・結晶性・表面化学状態・電極三次元構造を制御し、高電圧作動型電気二重層キャパシタ用の「超安定性カーボン電極」の実現を目指す。 当該年度では、①シームレス活性炭電極の表面修飾(高結晶化・窒素ドープ・不活性金属コーティングなど)、②高電圧充電前後での電極の状態変化分析(分解物による細孔閉塞・表面官能基変化など)、の二項目について前年度に引き続き実施した。①は高電圧充電時の電気分解反応そのものを促進する活性点を失活させて(安定化)、耐久性を改善するのが狙いである。前年度までに、高電圧フロート耐久試験(3.5 V・100 h・70 ℃)における容量維持率は窒素ドープによって83%にまで向上できている。当該年度では金属種をシームレス活性炭電極に担持することで同条件での耐久試験における容量維持率をほぼ90%にまで高めることができた。②については、シームレス活性炭電極に対する窒素ドープに注目して調べた。その結果、シームレス活性炭電極の高電圧充電による劣化には、分解生成物による細孔閉塞以外に集電体との接触抵抗の増大の寄与があり、窒素ドープは集電体との接触抵抗の増大を抑制する効果があることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高電圧作動型電気二重層キャパシタ用の「超安定性カーボン電極」を実現するための指標として、3.5 V・100 h・70 ℃での高電圧フロート耐久試験での容量維持率が90%以上であることを掲げている。これまでのシームレス活性炭電極は約80%の容量維持率を示すが、当該年度の研究によって容量維持率をほぼ90%にまで改善できた。容量維持率だけ見れば研究を開始して2年目にして目標に達している。ただし、容量維持率と体積比容量の両立に関してはまだ課題がある。 シームレス活性炭電極に対する窒素ドープ効果を調べる過程で、高電圧充電によるEDLCの劣化機構の解明を進めることができた。これまでにシームレス活性炭電極では分解物による細孔閉塞が劣化の原因であることが分かっているが、当該年度の研究結果によって集電体との接触抵抗の増大も無視できない要因であることが明らかになった。 その他の成果として、4 cm × 7 cmサイズのシームレス活性炭電極を用いたEDLCを作製し、動作確認できたことが挙げられる。これは、シームレス活性炭電極を実用のEDLCに実装するための基礎となる重要データである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見を元に電気二重層キャパシタ電極としての高電圧充電耐性を最大化するための条件を見出す。特に当該年度に見出された金属種担持法は有望なものであるが、担持条件はまだ最適化されていない。さらには、優れた体積比容量を示す高密度型のシームレス活性炭電極では金属種担持の有効性が実証されていない。これらの点について最終年度では重点的に研究を進めて行く。さらに、高電圧充電による劣化の原因となっている細孔閉塞について、これまでに実施してきたガス吸着法による細孔構造解析に加えて、X線小角散乱法によっても解析を進める予定である。
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