電気化学キャパシタは優れたパワーと充放電寿命を有する蓄電デバイスであるが、一般的にはエネルギー密度が低く、キャパシタの容量と耐電圧の改善が求められている。耐電圧に注目したキャパシタ電極の開発はこれまでにほとんど前例がなく、キャパシタの高エネルギー密度化・信頼性の更なる向上にとって極めて重要なことである。本研究では、代表的な電気化学キャパシタである電気二重層キャパシタの耐電圧を大幅に改善できる「シームレス活性炭電極」(カーボン粒子同士の接触界面が存在しない構造体)に注目した。高電圧充電に伴う容量劣化メカニズムを解明しつつ、シームレス活性炭電極の細孔構造・結晶性・表面化学状態・電極三次元構造を制御し、高電圧作動型電気二重層キャパシタ用の「超安定性カーボン電極」の実現を目指す。 当該年度では、①シームレス活性炭電極の表面修飾、②高電圧充電前後での電極の状態変化分析(分解物による細孔閉塞・表面官能基変化など)、の二項目について前年度に引き続き実施した。前年度までに、高電圧フロート耐久試験(3.5 V・100 h・70 ℃)における容量維持率は金属酸化物を表面担持することで90%近くまで向上できた。当該年度では高密度型シームレス活性炭電極に金属酸化物の担持を行い、体積比容量を損なうことなく高電圧充電耐性を高めることを目標とした。その結果、前述の耐久試験の条件下において容量維持率90%、体積比容量17 Fcm-3を達成できた。②については、金属酸化物担持シームレス活性炭電極について主として解析した。担持した金属酸化物層の結晶性・細孔構造分析を行ったところ、金属酸化物層は非晶質かつナノ多孔質であることが明らかになった。このことから、金属酸化物層の細孔に分解生成物が析出・吸着するために高電圧充電耐性が改善される可能性が高いことが見出された。
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