研究課題/領域番号 |
17H03124
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 峰夫 新潟大学, 自然科学系, フェロー (30149984)
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研究分担者 |
戸田 健司 新潟大学, 自然科学系, 研究教授 (20293201)
板谷 篤司 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60379708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 蛍光体 / LED照明 / セラミックス / 無機材料 |
研究実績の概要 |
本研究は,高効率 LED 用蛍光体として「マルチ発光中心を有する単一母結晶蛍光体」の従来にはない全く新しい考え方を導入し,その材料設計に必要な指針を探索することを目的としている.すなわち,単一母体において近紫外 LED 励起による赤-緑-青の 3 波長を同時に発光する蛍光体及び青色 LED 励起による赤-緑の2波長を同時に発光する蛍光体である.波長(2 波長)を同時に発光させる方法は,いわゆるエネルギー移動の原理に基づくもので,蛍光体母結晶に赤-緑-青の 3 波長(赤-緑の 2 波長)の源となる 3 種類(2 種類)の発光中心イオンをドープし,青色中心イオンから緑色および赤色中心イオンにエネルギーを伝達するものである.本年度では以下の項目について研究を行った. (1)マルチカラー発光を示したLi3NaSiO4:Eu2+を固相法により合成し,その発光メカニズムについて考察を行った。Li3NaSiO4はUCr4C4と類似した結晶構造を持ち、その結晶構造を有する蛍光体は特異的な蛍光特性を示すことが知られている.熱消光メカニズム及び蛍光寿命測定,TL測定を用いて発光メカニズムの解明を進めた. (2)Ca6BaP4O17:Eu2+は近紫外光または青色光励起により黄緑色発光を示すことが既に知られているが,本研究では、サイトエンジニアリングという設計指針を利用することで,Ca6BaP4O17:Eu2+の発光色を黄緑色から赤色にシフトすることに成功した. (3)Inokuti-Hirayama modelを用いたNa3Sc2(PO4)3:Eu2+,Tb3+,Mn2+のエネルギー移動メカニズムの解明について蛍光寿命曲線のカーブフィッティングを行い,エネルギー移動のメカニズムの考察を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチ発光を示す単一母結晶蛍光体のNa3Sc2(PO4)3:Eu2+,Tb3+,Mn2+の発光メカニズムについて蛍光寿命測定によるエネルギー移動の詳細なデータによりそれを解明することができた. 本研究を開始した当初では,マルチ発光中心を有する単一母結晶蛍光体としてNa3Sc2(PO4)3:Eu2+,Tb3+,Mn2+を中心に調査を行ってきたが,研究を進めていいく過程において新しいマルチ発光蛍光体としてLi3NaSiO4:Eu2+を発見することができた.この蛍光体では,発光イオンがEu2+イオンのみであるにもかかわらず白色の発光を示した.この蛍光体の結晶構造解析と蛍光寿命の測定により,この白色発光はEu2+イオンが2種類の結晶学的サイトを占めることが判明し,それぞれのサイトの環境が異なるためにEu2+単独賦活でありながら多色の発光を示すことがわかった.これは研究当初には予測していなかったことであり,多色を発光する単一母結晶蛍光体合成の新しい材料設計指針の提案となったことは評価に値すると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
Li3NaSiO4:Eu2+のマルチ発光蛍光体の発見は研究当初には予測していなかったことであり,多色を発光する単一母結晶蛍光体合成の新しい材料設計指針の提案に繋がった.今後の方針として,このような蛍光体の探索も研究対象として加えていく予定である.現在,その一つの例として,アルカリリソシリケート母体であるCsKNa2(Li3SiO4)4にEu2+を賦活した蛍光体を考えている.また,これまでは酸化物蛍光体を対象としてきたが,発光効率の優れた窒化物系蛍光体にも探索の範囲を広げて研究を遂行する予定である.
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