研究課題/領域番号 |
17H03125
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
田中 諭 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20324006)
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研究分担者 |
本間 剛 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70447647)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 粉体合成 / 結晶配向 / 焼結 / 透明セラミックス |
研究実績の概要 |
多結晶の利点である微細構造制御と添加物による組成制御、および、単結晶で見出された優れた光学特性を併せ持つ光学デバイスを開発し特性向上を目指している。具体的には、磁場を用いたコロイドプロセスによる結晶配向制御と高密度焼結によって、結晶異方性をもち、かつ、電気光学効果に優れるタンタル酸ニオブ酸カリウム及びニオブ酸バリウムナトリウム(一部タンタル添加)について検討している。これらの多結晶透明セラミックスを開発することを目的として、その粉体合成、配向、焼結に関する基礎科学から、さらには微構造制御までを行っている。 初年度に引き続き、粉体合成と磁場中配向を検討し、粉体特性と磁場配向成形との関係について検討を行った。加えて、粒子配向させた成形体の焼結条件について検討した。タンタル酸ニオブ酸カリウムはタンタルとニオブの比を変えることで正方晶性を変えることができる。正方晶性の高い方で粉体合成と配向を試みたところ、c軸が配向した成形体が得られた。焼結性については、融点近くまで温度を上げても相対密度が85%までにとどまり、課題となっている。 一方、ニオブ酸ストロンチウムバリウムナトリウムでは、ナトリウムの添加量を変えることで粒子径が異なり、配向性及び焼結性に影響を及ぼすことが明らかとなった。高温でのNa成分が分解することが影響すると考えられ、化学量論組成よりもNaを過剰に添加すると微細な粉体が得られ、成形時のc軸の配向性は少し低下するものの、焼結すると相対密度が99%まで到達することが明らかになった。 成形性と焼結性においていずれの物質でも課題がみられる。特にタンタル酸ニオブ酸カリウムについては焼結温度が融点付近であり、圧力等その他の効果を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原料粉の合成条件と配向に加えて、緻密な焼結体の作製までが大きな課題である。両者ともアルカリ金属を含み、化学量論組成を保ちにくいことが原因の一つであると思われる。そこでそれぞれの物質に応じて、原料粉体の組成と合成反応温度を制御することで配向に適するサブミクロンの粉体合成が可能となった。これにより、磁場中での粒子配向成形が可能となり、さらに焼結の条件までの一連の製造プロセスの条件を検討することが可能となった。 タンタル酸ニオブ酸カリウムについては、ニオブとタンタルの比を変えることで正方晶性を変えることが可能である。正方晶性を高くした組成で原料粉体の合成を行った。反応温度と反応時間を検討した結果、微粉体の合成が可能となり、配向成形体とその焼結を行うことができた。ただし、焼結させると融点付近にも関わらず相対密度が90%には到達しないことが分かった。現在、その対策を現在検討中である。 一方、電気光学効果が期待されるニオブ酸バリウムナトリウムについては、タンタルの添加に加え、ナトリウム成分を過剰にすることで微細な粉体を合成することが可能となり、粒子配向成形体の作製及び焼結を経て緻密な焼結体を得ることができた。ただし、粉体が微細化した分、配向性に課題がみられた。 粉体合成から配向体の成形、焼結条件を最適化することで、ようやく光学的な特性にまで到達することが可能である。そのためには相対密度は99.9%程度まで焼結できる条件を明らかにする必要があり、そのために原料粉体から再度検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
タンタル酸ニオブ酸カリウムの粉体合成を引き続き行い、スラリー調製、配向、焼結を行う。粒子径が1μm以上で配向するが、それ以下では難しかった。タンタルとニオブの比を変えることで正方晶性が上がることで微粒子でも配向は可能となった。ただし、その次の行程である緻密化については、融点付近まで温度を上げても焼結が十分に進まなかった。従って、焼結速度、到達温度、保持時間、そのときの結晶粒子径等にも注意して焼結させる必要がある。加えて、焼結緻密化への圧力の効果も検討に入れる。 同物質については、正方晶性の高い粉体と立方晶系の粉体とを混合した系でも配向成形と焼結を検討する。もともと屈折率の異方性が高い系ではないため配向性については少し低下しつつも、焼結性を優先し、光機能性を発現させることを目指す。 ニオブ酸バリウムナトリウムについては、ナトリウムを増加させることで微粒子化し、焼結が進み透光性まで到達した。散乱源となる要因は、配向性が低い点と、焼結時の緻密化よりも粒成長が先行する焼結挙動の制御である。配向性の向上に関しては、成形時のスラリー調製条件について、溶媒や粉散剤について見直す。粒子分布についても注視する必要がある。一方、焼結時の粒成長の制御については、高温等方圧加圧焼結の際の温度を変える。粒成長させないための温度と圧力を検討する。得られた透明体については、キャラクタリゼーションを行うとともに、特性評価へと移行する。
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