研究課題/領域番号 |
17H03129
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
笹井 亮 島根大学, 総合理工学研究科, 准教授 (60314051)
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研究分担者 |
森吉 千佳子 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00325143)
河口 彰吾 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10749972)
石原 伸輔 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (30644067)
藤井 康裕 立命館大学, 理工学部, 助教 (50432050)
藤村 卓也 島根大学, 総合理工学研究科, 助教 (80757063)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 層状複水酸化物 / 陰イオン交換反応 / その場観察 |
研究実績の概要 |
本研究では「層状複水酸化物(LDH)が示す陰イオン交換反応のメカニズムを動的解析挙動解析から明らかにする」ことを目的に研究を進めた.そのために本年度は,SPring-8のBL02B2ビームラインで,LDHの陰イオン交換反応時の構造変化をサブ秒スケールでその場観測できるシステムを確立した.このシステムを用いて,MgとAlとからなる最も一般的なLDHが示す塩化物イオンから硝酸イオンへの陰イオン交換反応のその場観測を行った.その結果,この陰イオン交換反応は低温約8℃においても非常に早く,構造変化から見ると10秒以下で反応が平衡状態に達することが明らかとなった.また,到達する平衡状態が硝酸イオンの濃度の影響を受け,実際に交換されている量がLDHの陰イオン交換容量を下回る場合には,中間状態(塩化物イオンと硝酸イオンが同じ層間に混在しているような構造と予想)を形成することを明らかにすることができた.一方で硝酸イオンに対して高い陰イオン選択性を示すNiとAlとからなりNiとAlの比が4であるLDHの場合には,反応速度が陰イオン選択性が低いものと比べさらに早く,さらに到達する平衡状態での構造が陰イオン交換率におおよそ依存しないことが明らかになった.このような結果から,LDHの陰イオン交換選択性は,構造変化がよりシンプルに進むほうが高いことを明らかにすることができた. 他の手法(反応の濃度変化,ラマン分光スペクトル,NMR)によるその場観察については,(1)濃度変化:秒オーダーでの濃度追跡可能な方法としてQCM法を検討したが困難であることが判明し,現在他の方法を模索している.(2)ラマン分光法に関しては現在,反応開始のトリガーについて検討を進めている.(3)NMRに関しては,懸濁液系における測定の可否を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に挙げた(1)良質なLDH結晶の合成,(2)動的測定装置と方法論の確立のうち,(1)はすでにいくつかのLDHの合成法を確立して,得られた試料を測定に用いている.(2)については,QCM装置による反応追跡が難しいことが明らかとなり,反応時の濃度変化測定法を現在検討中で少し遅れているが,SPring-8を用いた構造のその場観察については方法論がほぼ確立できている.ラマン分光およびNMRについては現在検討中である.以上のように検討中の部分もあるが,おおむね当初の計画通り順調に進展していると考えている. また,得られた結果については,平成29年度に2度の国内学会発表と,1度の国際会議で報告している.
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今後の研究の推進方策 |
LDHの陰イオン交換反応中の構造変化のその場観察については,SPring-8での実験時間を確保しつつ,すでに確立した装置および方法論にて,塩化物イオンから様々な陰イオンへの交換反応について実験を行うことで,動的挙動から見た陰イオン交換反応機構の解明を進める.ラマン分光およびNMRについては,分散液中での測定の可否を確かめつつ,反応開始をどのように行い,測定とつなげるのかを考えつつ,平成30年度中の方法論の確立を目指す.濃度の経時変化について,現状高速で濃度を追跡できる方法として,比色法の改良を試み進めていく予定である. それらの方法論の確立を最優先とすると共に,すでに特定の選択性を示したLDHについては,買う率で方法論を用いて,随時実験・解析し,考察を進めたいと考えている. なお得られた成果については,随時論文,学会発表を通して公表していく予定である
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