研究課題/領域番号 |
17H03131
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
笹部 久宏 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (10570731)
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研究分担者 |
横山 大輔 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (00518821)
片桐 洋史 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40447206)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 光化学 / 有機半導体材料 / 有機半導体デバイス / 有機EL |
研究実績の概要 |
希少な金属を使わずに有機ELの飛躍的な性能向上を実現する分子内電荷移動 (ICT) 発光材料、熱活性化遅延蛍光発光 (TADF) 材料が注目されている。申請者は ごく最近、エキサイプレックスのエネルギー移動を利用し、低消費電力と高輝度下での効率の低ロールオフを実現するTADF素子を開発した。本研究では、エキサイプレックスのアップコンバージョンと続くエネルギー移動により、TADF材料の長い遅延蛍光寿命が引き起こす問題を解決し、超低消費電力・長寿命有機EL素子を実現する。 2年目である本年は、エキサイプレックスを利用した低消費電力有機ELの開発を行った。具体的には、トリフェニルトリアジン/カルバゾール含有緑色TADF発光材料、DACT-II を発光材料に用い、申請者らが開発したピリジン系電子輸送材料 B4PyMPM とカルバゾール誘導体 CBP からなるエキサイプレックスホストを利用した。これらを用いた素子は、2.22 Vで駆動し、発光波長 534 nm、色度座標 CIE (0.37, 0.58) において、電力効率133 lm W-1を実現した。開発したデバイスは、これまで報告されている緑色TADF有機EL素子で最も低消費電力を達成した。 また、緑色発光材料 4CzIPN を用いたTADF素子の長寿命化にも取り組んだ。第三世代の熱活性化遅延蛍光材料では、ホール輸送材料と発光材料との相互作用が、効率低下を引き起こす大きな問題となっていた。本研究では、立体的に嵩高く、発光材料との相互作用をしにくいホール輸送材料であるヘキサフェニルベンゼン誘導体 4DBTHPB を用いることにより、発光材料の消光を防ぎ、輝度1,000 cd/m2で、輝度半減寿命が約1万時間、駆動電圧4.15 V、電力効率54 lm/W、外部量子効率20%以上が得られた。新たな素子は、これまでの報告に比べ、1.5倍以上の外部量子効率を実現しつつ、寿命は4倍に達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標は、超低消費電力・長寿命有機EL素子の実現であり、そのために、1) 高性能発光材料群の開発、2) ワイドギャップエキサイプレックスホストの開発、3) 超低電圧・長寿命素子の開発を行う必要がある。 2年目である本年は、2と3の検証を行い、新たなエキサイプレックスとTADF発光材料を利用することにより、わずか2.22Vで発光が開始する超低消費電力TADF有機ELの実現に成功した。また、TADF素子は素子寿命が短い問題があったが、新しく開発したホール輸送材料 4DBTHPB を用いることにより、高輝度・長寿命化を実現できたことから、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(i) 発光材料の化学構造と分子配向の相関関係の解明:本年度は、発光材料の化学構造と分子配向の相関関係の解明に主に取り組む。現在、未解明である分子配向の影響因子を検証するため、分光エ リプソメトリー解析、角度分解PL測定、X線結晶構造解析を用いた分子配向評価・解析を行う。単一分子では精度の高い設計指針の抽出は難し いと考えられるが、複数のホストとゲストの組み合わせにより、系統的な評価を行い、確度の高い分子設計指針を獲得する。具体的には、電子 供与性基や電子求引性基の数など系統的に部分構造を変えた材料群の比較検証を行う。 (ii) 基板水平配向性発光材料の開発と分子配向評価:上記で獲得した分子設計指針をもとに新規材料の開発を行う。開発した材料の分光エリプソメトリー解析、角度分解PL測定、X線結晶構造解析 を用いた分子配向評価・解析も行う。 (iii) 超低消費電力・長寿命デバイスの開発:昨年度開発した新たなp型材料の開発による長寿命デバイスの開発を行う。p型材料のの化学構造と駆動寿命の相関関係の解明に取り組む。
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