研究実績の概要 |
申請者らは、ジベンゾチオフェンを有する新たなアリールアミン誘導体 4DBTHPB を開発、緑色TADF素子で 1000 cd/m2 時、外部量子効率20%と輝度半減寿命 (LT50) 1万時間を実現した (H. Sasabe, Chem. Eur. J. 2018, 24, 4590)。新たな分子は、①深いイオン化ポテンシャル (IP: -5.8 eV) と立体障害によるエキサイプレックスの形成の抑制、②高い三重項エネルギー (ET: 2.7 eV) による励起子失活の抑制、③末端のジベンゾチオフェンにより高いアニオン耐性を実現する。 最終年度である本年は、TADF素子の長寿命化を更に推し進めた。3種類の誘導体を比較検証することにより、末端置換基が諸物性及び寿命に与える影響を検証した。3種類の誘導体の量子学計算を行い、アニオン状態での結合解離エネルギー(BDE)を評価した。その結果、ジベンゾフラン誘導体(4DBFHPB)の BDE が最も高く、基準となるフェニル誘導体(TATT)と比べ、1.2倍程度向上した。ついで、緑色TADF発光材料 4CzIPN を用いた有機EL素子を作成し、特性を評価した。その結果、1000 cd/m2 時、外部量子効率20%程度、ジベンゾフラン誘導体 4DBFHPB を用いた場合、LT50 24000 hr@1000 cd/m2を達成した。同じ素子構成で、水色TADF発光材料 5CzBN を用いた場合、500 cd/m2 時、外部量子効率17%、ジベンゾフラン誘導体 4DBFHPB を用いた場合、 LT50 1700hr@500 cd/m2 を達成した。得られた素子寿命は世界最長寿命であり、嵩高い化学構造を持ち、三重項エネルギーと BDE を高めた本ホール輸送材料の設計指針が、TADF型有機ELの長寿命化に極めて有効であることを示している。
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