研究課題/領域番号 |
17H03143
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
櫻井 淳平 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40345385)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンビナトリアル / ガラス転移 / 金属ガラス / 形状記憶合金 / 生体適合性 / アノード分極試験 |
研究実績の概要 |
平成29年度は下記について,研究を行った. 1.コンビナトリアル法によるTi-Ni系金属ガラスの探索及び物性評価 多元同時スパッタ装置を用いて,すべての組成が異なるサンプル群からなる組成傾斜ライブラリを製作し,真空加熱炉内で結晶化するまで均熱加熱しin-situでガラス転移温度,結晶化温度のハイスループット評価を行った.評価法は基礎検討を行っていた電気抵抗測定によりガラス転移温度測定のハイスループット評価を実施した.その結果,金属ガラスとガラス転移を示さない非晶質合金で,昇温時の結晶化過程で電気抵抗変化の傾向が異なることを明らかにし,Ti-Ni系金属ガラスのハイスループット評価が可能であることを明らかにした. 2.コンビナトリアル法によるTi-Ni系高成形性形状記憶合金の物性評価Ti-Ni合金は優れた生体適合性を示すため,本合金も同様な生体適合性を示すと考えられる.本合金の医療デバイスへの応用するためには,国際的な手術医療材料のASTMやJIS等の規格化が必要である.本合金の生体適合性を調べるために, JIS-T0302に基づくアノード分極試験用の評価基板の設計を行った.その結果,アノード分極試験の評価を実施できることは確認できたが,データのばらつきが大きく,再設計をする必要があることが分かった.再設計した評価基板は平成30年度に実施する予定である. 3.高成形性形状記憶合金の成形加工性の評価 予算的に成型加工装置の作製が難しい可能性があるので,冶具等を用いて簡易的に成形加工性の評価を行った.限定的な条件ではあるが,現在探索した材料のうち十分な成形性を示す材料及び加工条件を明らかにした.またデモンストレーションとして折り畳み可能なパイプ構造を作製し,成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算の削減により,実施項目の取捨選択は余儀なくされたが,最重要課題である,Ti-Ni高成形性形状記憶合金のコンビナトリアル探索手法を確立できたため,おおむね順調に進んでいる.これにより,本年度新規の高成形性形状記憶合金の探索を実施することができる. また,平成31年度に実施予定であった,生体適合性のコンビナトリアル評価法の検討を,医学部の研究協力者の協力のもと前倒しで検討を始めることができたた. また成型加工性の検討を行い,折りたたみ可能な高成形性形状記憶送金のパイプ構造の作製に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,これまでのコンビナトリアル評価技術を用いて,新規のTi-Ni高成形性形状記憶合金の探索を行う予定である. また,当初の予定通り形状記憶合金のコンビナトリアル物性評価として,熱処理温度傾斜ライブラリによる,結晶化条件や時効処理条件のコンビナトリアル探索を行う予定である. さらに,現在前倒しで進めた,生体適合性のコンビナトリアル評価法を確立して,本合金の有用性の評価を実施していく. 本年度作製予定であった成形装置については,もともとの装置概算費用が7000千円であり,本年度の予算総額を超えているため,製作することは,困難である.現在機能を限定した装置の作製が可能か検討を行っている.
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