研究課題/領域番号 |
17H03144
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北條 正樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (70252492)
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研究分担者 |
西川 雅章 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60512085)
松田 直樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (90756818)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭素繊維複合材料 / 破壊じん性 / 破壊力学 / メゾ構造 / 損傷許容性 |
研究実績の概要 |
炭素繊維複合材料の一体成形構造において,板厚方向の負荷により弱部となる積層層間などの破壊特性について,巨視的なスケールにおける破壊じん性を体系的に理解するために,マルチスケールな視点から複合材料の破壊特性を検討する実験・解析手法の構築とそれを活用して構造の損傷許容性を向上するための知見を得ることを目的に研究を遂行した.特に,本年度は損傷許容性の指標として重要であるモードII破壊じん性について,破壊靱じん性試験による実験的な検討を中心に行った.得られた成果は以下の通りである. 1. CFRP一方向積層板に対して破壊じん性試験と有限要素解析,負荷中断試験を行い,層間のき裂先端の塑性域の形成が原点コンプライアンスの変化に及ぼす影響を検討した.その結果,き裂が進展していない場合にもき裂先端の樹脂の損傷によって原点コンプライアンスが変化することが明らかとなり,計算上のき裂進展量が実測のき裂進展量よりも長く評価されることが分かった.この結果は破壊じん性を適切に評価する上で重要な知見である. 2. 破壊じん性試験におけるき裂先端のせん断変位分布をデジタルマイクロスコープを用いた微視的観察画像から計測し,その結果を有限要素解析と比較することにより,き裂先端の塑性域やプロセスゾーン寸法について一定の知見を得た.この結果は繊維と樹脂という構成要素の幾何学的状況が破壊様相に寄与する複合材料積層板特有の破壊をメゾスケールで力学モデル化する上で有用な知見と言える. 3. 複合材料積層板の破壊じん性を考慮した破壊解析手法として粒子法に類似した計算方法を適用可能なperidynamics解析法について検討した.積層構成に関して任意の繊維配向に対して積層板内部の複数位置・複数形態で発生する損傷を解析することが可能となった.構造の損傷許容性と材料の破壊じん性の関連を解析する上で有用となりうる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素繊維複合材料構造の損傷許容性をマルチスケールな視点から検討する上で重要な要素研究が進展しており,具体的には以下の観点で,一定の成果を得ている. (1) 材料スケールの破壊じん性について,メゾスケールでの検討の基礎となる塑性域やプロセスゾーンの評価方法が確立したこと. (2) 構造スケールと材料スケールの関連を解析する手法(peridynamics解析手法による,材料の破壊じん性を考慮した積層構造に発生する損傷評価)の構築について検討が進んでいること.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,複合材料構造の損傷許容性の指標として重要であるモードII破壊じん性について,破壊じん性試験による実験的な検討を行い,画像解析や有限要素解析といった手法を用いてメゾスケールでの検討の基礎となる塑性域やプロセスゾーンの評価を進めてきた.この検討をさらに進めて知見を蓄積する予定である.さらに,材料の破壊じん性と積層構造の損傷許容性の関連を検討することを目的として,実用構造で重要な指標となるCompression After Impact(CAI)特性と破壊じん性の関係を調べるために,構築してきたperidynamics解析法を応用して面外負荷時の損傷発生に関するモデル化を進める予定である.また,複合材料の破壊じん性には樹脂の分子構造の違いも樹脂自体の破壊特性を通じて影響を及ぼしていることが考えられているが,それをモデル化した検討は行われていない.そこで本研究では,分子シミュレーションを用いて樹脂特性を解析する手法を検討し,分子スケールと材料スケールの連携のための基礎の構築を試みる.
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