研究課題/領域番号 |
17H03146
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
|
研究分担者 |
阪上 隆英 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50192589)
菊池 将一 静岡大学, 工学部, 准教授 (80581579)
池尾 直子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (80647644)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 赤外線サーモグラフィ / エネルギ散逸 / 疲労強度 / 非破壊評価 |
研究実績の概要 |
H30年度に構築した光学-赤外線同期計測システムによる位置補正処理を用いて,散逸エネルギ計測を行った.チタン合金は鉄鋼材料と比較して低ヤング率で,かつ高強度な材料であるため,疲労限度付近では変形が大きく生じる.本計測システムを適用しない場合では明瞭な散逸エネルギ変化が確認されなかったのに対して,本システムによる位置補正適用後では明確な散逸エネルギの急増が確認された.またアルミニウム合金A5052においても同様の傾向が見られた.このように光学-赤外線同期計測システムによる位置補正を適用することにより,高精度な散逸エネルギ計測が可能になることが明らかとなった. 次に接合部への散逸エネルギに基づいた強度評価の適用例として,摩擦撹拌接合FSWを施した接合部の散逸エネルギ計測を行った.FSW接合部では母材と比較して,階段状応力増加試験での散逸エネルギの急増点は小さく,これ以降の応力振幅における散逸エネルギの値は小さくなった.また散逸エネルギの位相情報を調査したところ,FSW接合部の位相は母材と比較して大きくなった.これらの原因として,FSW接合部は母材と比較して降伏応力が大きくなっていたことから,FSWによる加工硬化が考えられた.降伏応力の増加は,結晶粒内のすべり変形の抑制に繋がることから,すべりなどの不可逆的な挙動を反映して散逸エネルギが小さくなったことが考えられる.散逸エネルギの位相は平均応力が大きくなるにつれて大きくなっていたことから,散逸エネルギの位相は塑性変形の開始応力が大きくなったことを示唆している可能性がある. 以上のように,散逸エネルギに基づいて接合部の強度評価が可能であることや,散逸エネルギの大きさおよび位相情報は,金属組織の挙動を反映していることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した光学-赤外線同期計測システムを用いた位置補正技術がチタン合金およびアルミニウム合金における散逸エネルギ計測の高精度化に有効であることが明らかとなった. またFSW接合部などにも散逸エネルギ計測を適用して,接合部の機械的特性の変化や微視構造の変化を検出できることが分かった.このように光学-赤外線同期計測システムによる散逸エネルギ計測の高精度化によって,散逸エネルギ計測に基づく疲労強度評価が可能な金属種を拡大することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
H30年度では散逸エネルギ発生メカニズムの究明のための散逸エネルギ計測の高度化として,光学-赤外線同期計測システムを構築し,その有効性の確認を行った.本計測システムを用いて,散逸エネルギの発生メカニズムの解明を引き続き検討する.具体的には結晶組織・結晶方位と散逸エネルギの関係について,顕微計測を用いて調査する.材料としてはオーステナイト系ステンレス鋼やマグネシウム合金,チタン合金,グラファイト相を有する球状黒鉛鋳鉄などを用いる. また散逸エネルギに基づく疲労限度・疲労強度推定法の各種材料における適用性の検討として,位相ロックインおよび散逸エネルギと疲労損傷の関係の物理モデルに基づき,各種材料における疲労限度・疲労強度推定法の高度化に取り組む予定である.
|