研究課題/領域番号 |
17H03150
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
仲町 英治 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60099893)
|
研究分担者 |
山本 浩司 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (70536565)
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 生体適合材料 / 再生用デバイス / 電磁場刺激 / 力学刺激 / 神経細胞PC12 / 神経軸索伸展 / コンピュータシミュレーション / 培養用足場 |
研究実績の概要 |
本研究では,生体適合圧電材料を設置し,交流磁場・直流電場・力学刺激を行うことで神経軸索伸展および神経ネットワーク形成・再生の促進が可能な三次元力学・電磁場刺激バイオリアクタの開発を目指す.まず,軸索伸展および神経ネットワーク形成過程を細胞体内および細胞周辺環境の状態因子の影響をシミュレート可能なセルラーオートマトン(CA)および有限要素法を採用したハイブリッド数値解析手法の開発を行った.幾何学的な分解能に限界があるものの神経ネットワーク形成過程の予測が可能であることを示した.再生用足場材料として,コラーゲンゲルを採用し,三次元直方体チャンバー内に神経細胞を混入した足場材料を注入・硬化させ,電場・磁場・力学場刺激のための繰り返し刺激負荷が可能な三次元バイオリアクタを設計製作した.神経細胞としてラット由来の疑似神経細胞であるPC12を採用し,力学・磁場・電場刺激負荷に対する軸索伸展促進効果を多光子顕微鏡(MPM)による500μm立方領域の形態変化観察により計測し定量評価を行った.実験数が不十分ではあるが,それぞれの刺激による軸索促進効果を確認できた.圧電材料を用いた実験では負荷ひずみ量が脆性材料であることから非常に小さく発生する電界も想定以下となりひずみ・電界同時負荷刺激装置については検討することが必要であると考える.次年度以降は刺激効果が顕著である直流電場刺激を採用することにした.神経細胞としてマウス由来の海馬大脳神経細胞を採用した予備実験を行った.一様磁場刺激に対する軸索伸展促進効果を確認したが,軸索がPC12に比較して細いことから鮮明な画像取得技術の開発も同時に行うことにした.次年度以降は,力学・電場・磁場刺激における軸索伸展速度の最大化および神経ネットワーク形成速度の最大化を目的とした最適な細胞周辺環境創生が可能な三次元バイオリアクタの開発を行う.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,以下に示す5課題により遂行された. (1)三次元神経ネットワーク形成予測シミュレーションプログラムの開発:細胞体から,樹状突起の伸展と選択的な軸索伸展によるネットワーク形成をシミュレート可能なセルラーオートマトン(CA)法と細胞外周辺環境としての力学・電磁場刺激の影響を評価可能な有限要素(FE)法を融合した CA・FEハイブリッド法シミュレーションコードの開発に成功した.PC12による実験結果およびマウス大脳皮質の各層における細胞体の配置解析結果を用いてシミュレーションを行うことで神経ネットワーク形成過程の予測が可能であることを示した.(2)三次元バイオリアクタ足場用コラーゲンゲルおよび生体適合ポリマーゲルの選択: PC12および海馬大脳神経細胞による神経ネットワーク形成用バイオリアクタに使用する足場材料の検討を行った.今年度はコラーゲンゲルの濃度,細胞体の三次元初期配置,軸索伸展に関する基礎データを取得し,試作したバイオリアクタ内での培養液循環,神経成長因子(NGF)の供給,およびPC12とマウス由来海馬の軸索伸展が可能であることを確認した. (4)三次元交流磁場刺激装置の開発:本年度は,Yoke構造を採用することで,任意の磁場強度を持つ三次元磁場負荷装置の設計製作を行い,一様磁場の確認およびMPM(多光子顕微鏡)による500μm立方体領域細胞観察が可能であることを確認した.PC12による軸索伸展およびネットワーク形成の観察を行った.直方体バイオリアクタ内で4.2μTの一様磁場を確認し,軸索伸展促進効果とネットワーク形成促進効果があることを確認した.本研究成果は2017年11月のASME(アメリカ機械学会)において研究発表を行った.(5)本年度は上記の課題(2)-(4)の研究を行った.次年度以降に力学・電磁場刺激バイオリアクタの創製および刺激効果の検証を目指す.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,本年度の交流磁場・直流電場・力学刺激下での神経軸索伸展および神経ネットワーク形成・再生結果を参考により高効率なバイオリアクターの開発を目指す.(1)三次元神経ネットワーク形成予測シミュレーションプログラムの開発:軸索伸展とネットワーク形成をシミュレート可能なセルラーオートマトン(CA)法と細胞外周辺環境としての力学・電磁場刺激の影響を評価可能な有限要素(FE)法を融合した CA・FEハイブリッド法シミュレーションコードの高精度化を目指す.幾何学的な分解能を上げたシミュレーションを可能とする大規模計算が可能な手法の開発を行う. (2)三次元バイオリアクタ足場用コラーゲンゲルおよび生体適合ポリマーゲルの選択:今年度はコラーゲンゲルの検討を中心に行ったが,次年度以降は,生体適合ポリマージェルの検討,および,初期細胞体配置(密度,細胞体間隔,対面角)を自在に行うための足場材料と播種手法の開発を行う. (3)新規圧電材料を用いた力学・電場刺激装置の開発:次年度以降は圧電材料を用いた電界負荷および直流電流による電界負荷の軸索伸展促進最適条件探索を行う. (4)三次元交流磁場刺激装置の開発:今後は,Yoke型バイオリアクターによるPC12の軸索伸展およびネットワーク形成の促進を目標として,本年度採用した4.2μTの一様磁場から,平均値と磁場分布に勾配を付加する条件を設定することを目指したバイオリアクターの再設計と製作を目指す. (5)次年度以降の研究において,本申請研究の統合としての三次元力学・電磁場刺激バイオリアクタ構築によるマウス由来の海馬大脳神経細胞を用いた神経ネットワーク再生の検証実験を行う.さらに,(5)の課題として,神経ネットワーク再生の時間短縮を目標とした最適な力学・電磁場細胞周辺環境条件の探索,生体適合材料および孔構造を持つ足場を創製する技術の開発を行う.
|