研究実績の概要 |
本研究では,電場,磁場およびひずみ場の刺激によるPC12細胞およびラット大脳皮質錐体細胞の軸索伸展促進および神経ネットワーク形成高速化を目的とした三次元バイオリアクタの開発を行った.本年度の主要5課題の成果を示す.(1)解析手法の開発:力学刺激を設計変数とし,軸索伸展促進率を目的関数とする最適条件探索を行うことが可能な有限要素法・CA法融合解析手法の開発に成功した.(2)三次元バイオリアクタ足場:コラーゲンゲルが軸索伸展に最適であることを検証し,高周波振動負荷により,播種したPC12細胞を任意の間隔で格子状配置することに成功した.(3)力学・電場融合刺激:新規圧電材料MSOの電界強度が非常に小さいために,高圧電特性を有する生体適合圧電ポリマーであるPVDFを採用した.繰返し引張ひずみ・電場融合負荷により軸索伸展促進効果を確認した.(4)交流磁場刺激:三次元磁場刺激の高精度化を進め,周波数50Hz,4.2μT一様磁場を実現し,軸索伸展促進効果を確認した.(5)力学・電磁場刺激:力学・電場・磁場の単独および融合刺激によりPC12細胞およびラット大脳皮質錐体細胞の軸索伸展促進および神経ネットワーク形成高速化が可能であることを確認した.力学刺激においては,応答曲面法を用いた最適刺激条件探索により,軸索伸展促進の最適刺激条件は,ひずみ2.3%,周期1 Hz,刺激回数17万回であることが分かった.直流電場刺激においては,電場43 mV/mm, 6.2 時間/日が最適であり,軸索伸展方向制御に対しては90 mV/mm, 24 時間/日が最適であることを明らかにした.さらに,軸索伸展促進と方向制御を同時に実現する最適条件は70 mV/mm, 7.9時間/日であることが分かった.最後に,力学,電場,磁場刺激の最適条件はラット大脳皮質錐体細胞に対しても有効であることを確認した.
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