次世代新規デバイス開発の核となるマルチフェロイック材料の電気磁気効果を飛躍的に向上することを目的とし,これまでに強誘電体材料で実績のあるマルチスケール構造最適設計を応用して,数値解析主導の材料開発に着手している.巨大なマクロ電気磁気効果の発現の鍵はミクロ不均質構造とカップリング(圧電および圧磁)特性の相乗効果にあり,従来の均質単結晶体の積層構造を超える潜在能力が未開拓である. 令和3年度はこれまでに構築した設計法を用いて,マルチフェロイック複合材料のマクロ電気磁気効果を最大化するミクロ構造の最適化を実施した.強誘電体をBaTiO3およびPZT,強磁性体CoFeO3およびTerfenol-Dとして,2層の配置および含有率,分極方位を設計変数として均質単結晶体の積層構造を超えるミクロ構造を探求した.特に,磁界あるいは電界を加える方向を入力方向,これにより生じる電束密度あるいは磁束密度を出力方向とし,これまで未解明であった入力方向と出力方向とが直交する電気磁気定数の最大化に着手した.その結果,従来構造を飛躍的に超える新しいミクロ構造を発見し,昨年度(令和2年度)に出願した特許に対して,国内優先権制度を利用して新たな研究成果内容を追加した.また,学術論文でも発表した. 一方,マルチスケール最適化構造を創製するため,熱溶解積層方式の3Dプリンティングへの展開をさらに遂行した.昨年度(令和2年度)に作成した圧電粒子分散フィラメントを用いて,実際に3Dプリンティングし,成形性および圧電性を調査した.その結果,ディスク状の3Dプリント試験片を成形した後,通電なく電気分極処理に成功し,圧電特性も計測できた.
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