研究課題/領域番号 |
17H03158
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
白瀬 敬一 神戸大学, 工学研究科, 教授 (80171049)
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研究分担者 |
佐藤 隆太 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60376861)
西田 勇 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40776556)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 切削力シミュレーション / エンドミル加工 / 工作機械 / 連成シミュレーション |
研究実績の概要 |
加工現象をモデル化して予測することは,加工効率や加工精度の改善,さらには加工トラブルの回避に非常に有効である。このため本研究課題では多目的・多用途に利用可能なエンドミル加工の切削力シミュレータを開発している。この切削力シミュレータは被削材をボクセルモデルで表現する点に特徴があり,解析する空間分解能と時間分解能を任意に変更することで,切削力シミュレータが多目的・多用途に使用できるようにしている。 ①多様な工具切れ刃形状に対応できるの静的切削力シミュレーションの研究では,切れ刃形状を数式によらず点群で表現するようにした。スクエアエンドミルやボールエンドミルだけではなく,ラジアスエンドミルやテーパエンドミルのような多様な工具切れ刃形状が定義できるようになった。これで工具の弾性変形および工具把持部の変形を考慮する切削力シミュレーションを行う準備が整った。 ②工具振動の影響を考慮した動的切削力シミュレーションの研究では,解析の時間分解能と空間分解能を小さくしていくと,被削材の形状をミクロンサイズのボクセルで表現しなければならず,長い計算時間と膨大なメモリを要することが分かっている。この問題に対して計算の並列処理やメモリの管理を工夫して解決策を検討した。 ③動的切削力シミュレーションに基づく加工面創成シミュレーションの研究は,①と②の成果を統合して次年度以降に実施する計画である。 ④動的切削力と工作機械動特性との連成シミュレーションの研究では,工作機械の動特性シミュレータと静的切削力シミュレータの統合が終わりアルゴリズムの妥当性を検証した。まだ,動的切削シミュレータの代わりに静的切削力シミュレータを使用しているために,加工条件によっては実加工とシミュレーションで予測した切削力波形が異なる場合もあるが,加工中に生じるびびり振動を連成シミュレーションで表現できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では4つの到達目標を設定して研究実施計画を立案していた。目標①の多様な工具切れ刃形状に対応できるの静的切削力シミュレーションでは,既存のシミュレータが被削材をボクセルモデルで表現する特徴を活かして,切れ刃形状を数式によらず点群で表現することを目標としていた。目標は計画どおりに達成され,スクエアエンドミルやボールエンドミルだけではなく,ラジアスエンドミルやテーパエンドミルのような多様な工具切れ刃形状が定義できるようになった。目標②の工具振動の影響を考慮した動的切削力シミュレーションでは,工作機械の主軸および工具系の加振実験を行って動特性を明らかにすることと,ボクセルサイズ(空間分解能)と繰り返し計算の適切な時間間隔(時間分解能)を検討することを目標としていた。工作機械の主軸および工具系の加振実験から解析に必要なパラメータを取得するとともに,長い計算時間と膨大なメモリを要するという問題に対して,計算の並列処理やメモリの管理を工夫して解決策を検討した。目標②もほぼ計画通りに達成された。目標③の動的切削力シミュレーションに基づく加工面創成シミュレーションは,目標①と目標②の成果を統合して実施する計画で,次年度以降に着手する。目標④の動的切削力と工作機械動特性との連成シミュレーションでは,工作機械の動特性シミュレータと静的切削力シミュレータを統合して連成シミュレーションのアルゴリズムの妥当性を検証することを目標としていた。2つのシミュレータを統合するという目標は計画どおりに達成され,加工中に生じるびびり振動を連成シミュレーションで表現できることが確認できた。以上のことから,本研究課題は当初の実施計画に対して「おおむね順調に推移している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は当初の実施計画に対して「おおむね順調に推移している」ことから,次年度以降も実施計画に沿って研究を実施していく。目標①では切れ刃形状を数式によらず点群で表現できるようになったので,工具の弾性変形および工具把持部の変形を考慮する切削力シミュレーションに取り組むことができる。これにより工具の弾性変形および工具把持部の変形に起因する加工誤差の予測を可能にする。目標②では工作機械の主軸および工具系の加振実験から解析に必要なパラメータを取得しているので,動的な現象を表現可能な動的切削力シミュレータの開発に着手する。目標③では昨年度の目標①と目標②の成果を統合して加工面創成のシミュレーションを実現する。粗さ曲線を含む加工面のシミュレーションではボクセルサイズがミクロンオーダーとなり,繰り返し計算の時間間隔も非常に小さくしなければならない。シミュレーションのアルゴリズムとしては実装可能であるが,現時点では計算機のメモリが足りるのかどうか,許容できる計算時間で結果が得られるのかどうかは判断できない。メモリあるいは計算時間に制約が生じた場合は,シミュレーションの精度と計算時間のトレードオフを考慮して,ボクセルサイズ(空間分解能)と繰り返し計算の適切な時間間隔(時間分解能)を検討する。目標④では静的切削力シミュレータを動的切削力シミュレータに置き換えて,連成シミュレーションを完成させる。これにより,切削力が工作機械の振動に影響を与え,工作機械の振動が切削力に影響を与えるという連成効果について考察ができるようにする。
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