研究課題/領域番号 |
17H03162
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
武田 行生 東京工業大学, 工学院, 教授 (20216914)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械設計 / 機構学 / ダイナミックペア |
研究実績の概要 |
具体的な人間‐支援機械系として,足首リハビリ装置,手指リハビリ装置,歩行訓練機などを取り上げ,ダイナミックペアを導入したモデル化と運動および力学解析,ならびに支援機械の機構設計を行った.足首リハビリ装置を対象とした具体的な検討では,まず,昨年度においてパラメータ同定を行ったリハビリ装置と使用者の下腿部および足部の装着部のダイナミックペアを有する,使用者とリハビリ装置からなる運動力学モデルを構築した.そして,リハビリ装置の入力運動に対する使用者の足首の運動と足首関節部および装着部に発生する力を求めるための定式化と数値計算アルゴリズムの構築を行い,使用者に過度な負荷が生じずに効果的なリハビリ運動が実現でき,かつ装置の単純化が図れる構造について,具体的に検討を行った.その結果,足首関節と装置の駆動軸の偏心などに適応するための受動対偶の1つを除外した設計解により装置の単純化が図れることを数値計算により示すことができた.また,手親指のリハビリ装置を対象として,指への装着部をダイナミックペアでモデル化した上で内転・外転および伸展・屈曲のリハビリ動作を行う機構を提案し,その運動解析を行った.さらに,折り紙構造をモデル化した支援機械を対象とした検討では,折り紙特有の挙動が実現されるために必要な微妙な弾性要素の効果的作用を弾性エネルギーにより理論的に説明することに成功した.これら以外にも,ダイナミックペアの概念とこれに基づくモデル化に基づいて,食事支援ロボットの箸型グリッパの把持シミュレーションおよびこれに基づく最適把持位置の決定や,弾性ジョイントアクチュエータの挙動把握,すき間のある球面軸受のモデル化とこれがパラレルロボットの動的挙動に及ぼす影響についての検討を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,リハビリ装置,装着形支援機械,杖などの支援機械と使用者からなる系を1つの機械運動系として捉え,使用者と一体となって効果的に支援動作を実現するための支援機械の設計を可能とすることを目的としている.これに対し,2018年度は,初年度に構築した,人間‐支援機械系の運動学・力学的な解析・設計手法の基本的な枠組みを利用して,足首リハビリ装置を具体的な対象として,ダイナミックペアを導入することによって,装置の機構構造の単純化と効果的なリハビリ運動を同時実現することを可能とする機構設計の提案を行うに至った.この結果は,ダイナミックペアを導入することによって見通しの良い解析・設計プロセスが構築できることを表すものである. その他,折り紙構造をモデル化した支援機械の挙動解析,箸型グリッパの把持シミュレーション,弾性ジョイントアクチュエータの挙動解析,パラレルロボットにおける球面軸受のすき間のモデル化などを具体的に取り上げ,ダイナミックペアの概念とこれに基づくモデル化手法の構築,適用範囲の拡大を種々試みている. 以上の状況は,当初の計画通りであり,特段の遅れは生じていないため,次年度も計画通りに研究を推進することにより,さらに適用対象を拡大し,具体的な問題点を明らかにするとともに解決を図ってゆくことで,実用的な手法の整備を進めることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記載の通り,今後の研究については,予定通りに推進していく.主たる対象は人間‐支援機械系であり,関連する種々の系を具体的にモデル化,解析および設計することが主目的であるが,手法の適用範囲をできるだけ広くするために,対象を人間-支援機械系に限定せず,種々の機械運動系として検討を進める.その結果として,ダイナミックペアに基づく,実効性のある機械運動系の解析・設計手法を構築してゆく.
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