研究課題/領域番号 |
17H03164
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
張 賀東 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80345925)
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研究分担者 |
三矢 保永 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 上席研究員 (10200065)
古賀 伸明 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (80186650)
渡邉 崇 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (40182927)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トライボロジー / 分子シミュレーション / 境界潤滑 |
研究実績の概要 |
添加剤含有潤滑現象の解明を目指し,シミュレーションと実験の両面から下記の研究項目を実施した. ・マルチスケールシミュレーションの実現に向けた第一歩として,固体摺動面に酸化鉄,潤滑油にドデカン,添加剤にステアリン酸を対象として,高精度な全原子モデルを構築した.とくに,汎用力場に含まれていない鉄と酸素間の結合長・結合角相互作用について,独自に構築・実装し,固体摺動面の熱振動を再現可能とした.本モデルを用いた分子動力学(MD)シミュレーションは,潤滑油と添加剤の密度・粘度の実験値,および固液間相互作用エネルギーの量子計算の結果を再現できることを確認した.また,摺動が伴わない静的条件において,潤滑油中に含まれる添加剤の固体表面への吸着過程を明らかにした. ・全原子モデルを用いたシミュレーションの結果から得られた分布関数や,圧力-密度関係,拡散係数を再現するように,粗視化モデルを構築した.また,散逸粒子動力学(DPD)法を拡張したTransverse DPD法をモジュール化したプログラムを開発し,並列性とメモリの有効利用に優れたオープンソースのMDシミュレータLAMMPSに組み込んだ.これにより,全原子MDシミュレーションに比べて,計算精度が同程度で,かつ計算時間を1/40とした粗視化MDシミュレーションを実現した. ・実験では,主として,水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いた吸着膜上の液体の界面スリップ計測法の確立および吸着測定の安定性の向上に取り組んだ.前者については,計測法の限界を突き止め,今後の課題を明らかにした.後者については,測定安定性に影響を及ぼす因子を探索するとともに,水晶振動子を固定するためのセンサモジュールを新規設計・試作し,安定性向上の見通しを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションについては,研究実績の概要に述べたように,当初目標としていた 1) 全原子モデルの構築とシミュレーションおよび 2) 粗視化モデルの構築を達成できた.実験については,QCM測定における課題を明らかにし,安定な測定の実現見通しを得た.そのため,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションでは,粗視化MDシミュレーションを重点的に実施し,固体摺動面間の潤滑油に含まれる添加剤の動的挙動を解明するための計算データを蓄積する.また,粒子法を用いたマイクロスケールシミュレーションについて,検討を始める.実験では,QCMとAFMを用いて,摺動がない条件において,潤滑油に浸漬している単一固体表面への添加剤分子の吸着現象を測定することを重点的に進める.
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