機械における摺動表面の多くは潤滑油中に晒されており、潤滑下でのトライボロジー現象を真に理解するには、摺動場における固液界面の状態を正確に把握することが重要である。実機械においては、潤滑油中に複数の添加剤が配合されており、それらが摺動界面に分子鎖状の吸着層を形成するとされているが、その構造およびトライボロジー特性は明らかになっていない。そこで本申請では、申請者らがこれまでに立ち上げてきた複数の固液界面分析手法をさらに高度化し、複数添加剤を併用した際の固液界面の構造解析とその吸着層形態の分類分けを行う。また、コロイドプローブAFMを用いて、界面に形成された吸着層のナノトライボロジー特性を把握する。最終的に、摩擦低減効果を最大限に発揮し得る境界潤滑層のあり方について検証し、最適な添加剤の組み合わせとその設計指針の提示を目指すこととした。本年度は、【研究目標②】である「コロイドプローブAFMによる吸着層のナノトライボロジー特性の把握」および【研究目標③】である「①と②の結果に基づく最適な添加剤の組み合わせとその境界潤滑層構造の提示」を目標とし、エンジンオイルを想定した系を対象として実験を行った。具体的には、ZDDPと無灰FM剤の最適組み合わせを模索するため、複数の無灰FM剤を用意して界面構造およびナノトライボロジー特性を調べた。その結果、ZDDPと無灰FM剤を組み合わせて添加するといずれもZDDPのみの場合よりも摩擦係数が下がること、その際、ZDDPによるトライボフィルムの形成は抑制されること、等を確認した。最終的に、油性剤および極圧剤の併用がどのような作用・効果をもたらし得るかに関して、設計指針をまとめるに至った。
|