研究課題
マウスの網膜の顕微鏡画像から血管網を3次元構築する画像処理を確立すると共に、リモデリング前後の構造を取得することに成功した。これにより、リモデリング前後の構造変化、それに伴う血流や酸素の濃度の変化のシミュレーションが可能となり、局所の力学因子を抽出した。次に、画像処理で抽出された血管網構造に基づき、動脈もしくは静脈からの分岐数によって各血管を分類した。これを複数のサンプルに適用した結果、プルーニングが生じやすい領域は大きく3つの領域に分類されることを明らかにした。各領域においてリモデリングと局所の力学因子の異なる関係性を調査した結果、それぞれ異なった傾向があることが分かった。この結果は、低いせん断応力の領域でリモデリングが発生するという従来のモデルが必ずしも全ての領域で成立しないことを示唆しており、大変興味深い結果と言える。この結果を受けて、3つの各領域毎の局所の力学因子とリモデリングの関係を調査し、両者を結びつけるモデルを提案した。また、ノックアウトマウスを用いて、初期に分岐数が余剰になるサンプルと分岐数が不足するサンプルにおける血管形成過程を観察した。その結果、いずれのノックアウトマウスにおいても、初期のネットワーク形状は異なるものの、リモデリングを通じて全体として最適な血管構造へ変化していく様子が確認できた。また、血流の数値シミュレーションより、リモデリング後において、血管網末端における血流の供給が増加し、より最適な血管構造へと変化していることが分かった。一方、マイクロデバイス内において血管内皮細胞を培養することによって、血管新生を誘発し、デバイス内部に血管ネットワークを形成させる方法論を確立し、顕微鏡画像から3次元構造を抽出することに成功した。また、上記の構造を数値シミュレーションコードに取り込み、流れの様子や局所の力学因子を抽出するツールを確立した。
2: おおむね順調に進展している
マウスの網膜における顕微鏡画像からの3次元血管構造の再構築、およびマイクロデバイス内での血管新生の再現、画像の取得共に、その方法を確立できた。また得られた3次元構造を流体計算コードへ取り込み、流れのシミュレーションを行うツールも整備できた。複数のサンプルを解析する中で、局所の力学因子とリモデリングに関して、統計的に有意な傾向が確認されており、リモデリングの数理モデルの構築に向けて極めて有用な知見が獲得できた。
前年度までの画像処理ツール、流体シミュレーションコードを用いて、複数のサンプルを解析することによって、局所の力学因子とリモデリングに関するより統計的に確かなデータを取得する。また、それらの結果を集約して、リモデリングに関する数理モデルを精緻化し、局所の力学因子に基づくリモデリンの予測モデルを構築し、その予測性能をマウスの網膜、およびマイクロデバイス内において検証する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 10件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)
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