研究実績の概要 |
本年度の研究の進展は以下の通りである. 1) 境界近傍の特異性を示す数値的実例を計算規模を大きくして補強している.これは既発表の一般理論(Takata & Taguchi, Journal of Stat. Phys. 168, 1319 (2017))で取り上げた数値例の補強を目的とする.多倍長計算が必須となり忍耐のいる取り組みが続いている.昨年度から継続中で未完了. 2) 前年度に引き続き,マグナス効果に関連して回転球により誘導される流れの問題を線形理論の枠内で解析・数値解析した.球形という単純な境界形状で理論的予測のとおりの特異性が発現することを実証した.また,Maxwell型境界条件を効果的に用いて,この特異性が境界上の速度分布関数の不連続性に関係することを定量的に示した.その成果は学術誌に掲載されている(Taguchi, Saito & Takata, J. Fluid Mech. 862, 5 (2019)). また田口により国内外の講演会でも報告されている. 3) 一般化すべり流理論を補強する目的で,Shakhov模型に対するデータベースの整備を進め,第31回希薄気体国際会議で発表した(会議録論文を投稿中).これにより標準型ボルツマン方程式(剛体球分子模型),BGKモデル,ESモデル,Shakhovモデルという,現在,最も普及している運動論方程式に基づくデータ整備が完了した. 4) 音響領域の現象を扱う一般化すべり流理論の構築に着手した.ここでは 3) で整備したすべり係数などのデータが活用できる.バルク領域の現象を記述するEuler型方程式に加え,音響境界層の支配方程式,気体論的境界層の構造を解明しつつある.
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