研究課題
固体高分子形燃料電池の氷点下環境からの起動における電池内のマルチスケール水輸送・凍結機構を明らかにするとともに、耐氷点下起動性ならびに耐久性向上のための触媒層・MPL・ガス拡散層構造および制御手法を提示することを目的とし、研究を行った。主な成果を以下にまとめる。1.スタック中央部のセルの断熱環境模擬実験に対し、より複雑な電流負荷、高電流密度に対応可能で、セル温度だけでなくセル内温度勾配も模擬できる手法への発展を試みた。セパレータ自身を断熱材で作製し、熱容量に応じた部材を反応部のみに組み込む方法を考案することで、従来の単セル実験からの大幅な断熱性能の向上を実現した。これにより、ドライアウトすることなく効率的に昇温させる様々な起動方法のより詳細な検討や零度以上に達した後に高電流密度運転へ切り替える過程の温度変化も模擬可能とした。2.-30℃の極低温の起動開始を対象とし、ドライアウト条件の推定のために膜内の含水状態とプロトン抵抗変化を評価する簡易モデルを実験結果を基に構築した。このモデルにより、起動初期の膜の含水状態と負荷電流密度の複雑な関係から決定されるドライアウト発生条件を整理できることを示した。また、前年度に有効性の示された親水性カーボンファイバーMPLをドライアウトの影響が顕著なアノード側に用いることによる効果も確認した。3.昨年度に有効性が確認されたガス拡散層の親水性表面処理を、実際の単セルに適用して性能評価実験を行った。これより、低温環境下(零度以上)のIV性能を向上でき、本手法のガス拡散層から流路への排水性向上効果が示された。4.開発済みの凍結固定化法により、流路幅が広くなると触媒層とMPLの密着性が失われ、これらの界面に水の層が形成され性能低下が引き起こされることを示すとともに、性能低下の原因が主に触媒層内の酸素輸送抵抗の増大に起因することが推察された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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