研究課題/領域番号 |
17H03179
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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研究分担者 |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (90709156)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高圧燃焼 / 乱流燃焼 / バイオ燃料 / 異性体燃料 / レーザー誘起蛍光法 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,燃焼科学の先端研究分野である高温高圧乱流燃焼において,非食料バイオマスから生産されるアルコール系C3,C4バイオ燃料およびその混合燃料の乱流燃焼機構を明らかにし,極限環境乱流燃焼の学理構築を図りCO2排出削減燃焼技術へ寄与することを目的とする.具体的にはエンジン燃料として有効なプロパノール異性体,ブタノール異性体ならびにそれら混合燃料の乱流予混合火炎を高温高圧下で安定化させ,1)乱流燃焼速度および乱流火炎構造,2)中間化学種CH2O,NO,OHのレーザー計測による局所濃度分布,3)燃焼排出ガス組成を明らかにし,アルコール系C3・C4バイオ燃焼に対する乱流燃焼の異性体効果,混合組成効果,温度圧力依存性に対し,反応動力学と局所火炎不安定性原理に基づくメカニズム解明を行う. 平成29年度は,研究計画に明記された液体燃料蒸発装置の組み込みと燃焼試験を行うと共に,C2,C3,C4アルコール異性体,ならびにC2からC4までのアルカン燃料の乱流予混合火炎の排ガス特性解明に重点を置き,FTIRを用いた排ガス組成の計測を大気圧ならびに高圧下で実施した.特に,NOとCOに注目し,計測結果に基づき詳細反応を考慮した数値解析を行って,異性体による排出濃度に違いが生じるメカニズムを明らかにした.特にCOに関しては,C2燃料からC4燃料まで総じてアルコール燃料はアルカン燃料と比較してCO生成濃度が小さく,完全酸化される割合が大きいことがわかった.これは,アルコール燃料ではヒドロキシ基を有するラジカルおよびHO2ラジカルからのOH生成量が大きく,CO + OH = CO2 + Hの反応速度が増大するためであることが反応経路解析などからわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C2からC4のアルコール異性体ならびにC2からC4のアルカン燃料の全てについて,乱流予混合火炎の安定化に成功した.排ガス特性に関して,これら全ての燃料でFTIR計測を実施し,併せて詳細反応を考慮した数値解析を行い,反応経路解析結果を用いて実験により得られた排ガス特性のメカニズムを考察している.排ガス特性,特に異性体効果とアルコール系燃料の特徴に関する研究は研究計画の重要な柱であり,最大圧力が0.3 MPaであるものの圧力効果に関しても一定以上の理解が進んだ.NO生成に関しては異性体燃料の反応論的効果は限定的であり,サーマルNO生成における火炎温度の違いの影響や輻射損失による温度効果が大きいことが重要であるという現時点での考察を行っている.一方,CO生成に関しては,アルコール燃料においてヒドロキシ基を有するラジカルおよびHO2ラジカルからのOH生成量が大きく,CO + OH = CO2 + Hの反応速度が増大することによるCO排出抑制が反応計算から確認されるなど成果を得ている. 本研究のもう一つの柱であるOH, NO, CH2O PLIF同時計測による火炎構造の解明に関しては,本年度は特にOH, NO-PLIF同時計測に重点を置いて実施した.ただし,基本的にNO濃度が低いため微量のアンモニアを添加してPLIF計測試験を実施した.新規高感度カメラの導入,同時計測を実現する光学系配置などに工夫を加え,高圧下でのOH, NO-PLIF同時計測に成功した.それにより,圧力条件によってOH分布に対するNOの上流分布の様相が異なっており,これは圧力増加によって拡散作用が抑制され,NOの上流拡散が抑制されたためだと考察された.以上より,FTIRによる排ガス濃度計測およびPLIF同時計測の両方で期待された成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,C2からC4のアルコール異性体の予混合火炎構造の違いに注目し,OH, NO, CH2Oの分布を重点的に調べていく.特にOHとCH2O分布のオーバーラップは炭化水素燃料の発熱帯分布によく一致することが知られていることから,これら化学種の分布に加えて発熱体分布への異性体効果にも注目して火炎構造の解明を行って行く.さらに乱流火炎構造および燃焼特性に関して,OH-PLIFから得られる反応進行変数と火炎面密度の関係,乱流燃焼速度への異性体効果を明らかにしていく.CH2O分布が計測されることによって,中間化学種の拡散効果を見積もることが可能になり,詳細反応機構による数値解析と共に火炎不安定性への異性体効果も明らかになっていくことが期待される.混合燃料については最終年度(平成31年度)に行う.これら実験および数値解析は高圧下でも実施し,本研究課題の目標である極限環境の一端である高圧乱流燃焼の学理構築に資する.
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