研究課題/領域番号 |
17H03189
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60344735)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 非線形振動 / 圧電デバイス / ハイパワー超音波 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者が考案した非線形圧電振動評価法を用いて、大振幅駆動時の圧電振動特性を考慮した材料開発・設計シミュレーション手法を確立し、小型で強力超音波発生可能な圧電デバイスに応用することを目的としている。 本年度は、31効果圧電振動子についてアドミタンス特性から圧電材料の高次弾性定数を測定する方法を考案し、鉛系圧電セラミックス(チタン酸ジルコン酸鉛)、非鉛系圧電セラミックス(ニオブ酸カリウムナトリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム―チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ビスマスナトリウム―チタン酸バリウム、ビスマス層状構造強誘電体)、非鉛系圧電単結晶(ニオブ酸リチウム)の高次弾性定数を評価した。これにより、圧電単結晶は非線形性の少ない材料であり、セラミックス材料では結晶粒界などの構造欠陥が高次弾性を高めていること、圧電セラミックスではアクセプタ添加やモルフォトロピック相境界から離れた組成比にすることでドメイン壁の可動性を抑制し、高次弾性定数の絶対値を小さくすることができることを明らかにした。さらに、測定した高次弾性定数を考慮することで大振幅駆動時の振動速度や出力パワー密度の性能評価指数を考案した。 また、高次弾性項を考慮した圧電方程式から非線形伝達マトリックスを導出し、1次弾性定数を歪みに依存した非線形パラメータとするとともに、振動子中の電束密度と先端振動速度の関係式を用いて、反電界の生じる33効果振動子でも非線形振動を取り扱う手法を考案した。これを用いて、ランジュバン振動子の全長に比べて十分短い圧電振動子の場合には歪みを一定とすることで、ボルト締めランジュバン振動子の非線形圧電振動について解析を可能とし、製作したランジュバン振動子のアドミタンス特性から、内部の圧電材料の高次弾性定数が得られることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非鉛材料の非線形振動特性を評価すると共に、ランジュバン振動子の非線形振動モデルへの適応を行うことに既に成功しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
圧電材料の高次弾性評価方法を圧電材料の開発プロセスに用いることで、圧電材料の非線形特性の向上を試みる。既に、チタン酸ジルコン酸バリウム―チタン酸バリウムカルシウムではMn添加を行った場合、ニオブ酸カリウムナトリウムではナトリウム比率を増加させた場合に、高次弾性定数の絶対値が減少することが確認されており、特にチタン酸ジルコン酸バリウム―チタン酸バリウムカルシウムは圧電定数も高く、強力超音波応用に適した圧電材料の創成に期待が持てる。 また、非線形伝達マトリックス法を用いることで、ボルト締めランジュバン振動子の締めトルクを変更した際の圧電材料の非線形特性の変化を測定し、圧縮予圧と非線形特性の関係を測定する。圧縮予圧を計算するため、ボルトの軸力を測定可能なランジュバン振動子を製作し、軸力とアドミタンス特性の測定を行う。 さらに、高次弾性を考慮した非線形有限要素法による圧電振動シミュレーション手法の検討を行う。そのため、現在測定手法が確立している3次の縦弾性係数の他に、せん断弾性係数などを含めた高次弾性テンソルを得ることが必要である。測定対象に適した形状の振動子を測定することで、それぞれのテンソル成分を求めると共に、3次よりも高次の弾性定数については、圧電材料の歪みに対して影響を及ぼす限界を評価し、考慮するべき高次弾性定数の範囲についても検討を行う。大振幅駆動時には発熱も重大な問題となるため、各弾性定数の温度依存性についても測定を行い、発熱についても有限要素法計算の中に含め、係数の変化が圧電振動に及ぼす影響についても明らかにする。
|