研究課題/領域番号 |
17H03203
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベアリングレスモータ / 磁気軸受 / 磁気浮上 / モータドライブ / 統合巻線 |
研究実績の概要 |
本研究では,磁気浮上ベアリングレスモータにおいて,これまでにない新しいインテグレーション化と高速化を目的としている.具体的には,従来,磁気浮上巻線と電動機巻線が別々に固定子コアに施されていた巻線を,1種類の巻線に統合し,モータ構造の簡素化とトルク増大を図る.さらに,低インダクタンスである高速モータに適用可能な,定電流源モジュールを用いたマルチレベルの電流形インバータを提案し,電流リプル・損失低減を図る. 巻線統合化に関しては,2手法提案した.第1手法では,システムの小形化・低消費電力化・低コスト化を目指し,パワースイッチング素子を8個のみで半径方向の2自由度の位置決め制御とモータベクトル制御が可能な新しいトポロジーを提案した.有限要素解析により試作機設計を行い,実機を試作し,磁気浮上回転を実現した.第2手法では,10極12スロットの表面磁石貼付構造において,巻線を2組の三相巻線から,1組の四相巻線に変更し,巻線統合化を検討した結果,各相を非対称配置することで磁気浮上回転が可能であること示し,実験により5000rpmまでの安定した駆動を確認した. 高速化に関して,直流電流源を三相電流形インバータに接続し,さらにインダクタを介してもう1台の三相インバータと接続する手法を提案した.これらインバータ出力に三相モータ負荷を,コンデンサを介して接続する.また,低速運転では,提案制御手法が適用できないために,一般的なPWM電流駆動を適用する.提案回路について,数値シミュレータを用いて検証した結果,2kHzまでの駆動周波数域においてひずみのない正弦波電流を三相負荷に供給可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベアリングレスモータの巻線統合化に関して,新たに2種類の手法を提案している.第1手法では,パワースイッチング素子を8個のみで,半径方向の2自由度の位置決め制御と,モータベクトル制御が可能な新しい8スロット2極表面磁石貼付形構造を提案し,磁気浮上回転を実現している.しかし,回転子のアンバランスのためまだ安定な高速回転ができていない状況であり,次年度,改善予定である.第2手法では,10極12スロットの表面磁石貼付構造を提案している.巻線は四相で,各相を非対称配置することで磁気浮上回転が可能であること示し,実験により5000rpmまでの安定した駆動を確認した,来年度はさらなる高速化を検討する.また,高速化に関して,チョッパー回路から構成される疑似直流電流源を,三相スイッチング回路に接続し,さらにインダクタを介してもう1台に接続することで,7レベルの電流形インバータを新たに提案している.回路シミュレータにより動作を確認し,現在,インバータ基板を制作中であり,次年度は,試験予定である.以上により,おおむね順調に進行していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
巻線統合化:第1手法に関しては,まずは無負荷で10万rpm以上での安定した磁気浮上回転を試み,次いで,非接触渦電流ブレーキを用いた負荷試験を行い,モータ性能を評価し,提案構造の有用性の実機実証を行う.さらに,回転子上部にブレードを取り付け,ファンモータに応用する.第2手法に関しては,まず,巻線統合化の汎用的な設計方法を確立させる.次いで,誘起電圧補償および支持力・トルク脈動補償方法を提案し,実機により実証実験を行う.さらに,ブロアモータに適用し,慣性中心での駆動により回転同期成分の外乱を除去した低振動の駆動を実現する.さらに今後は,第3手法「コンシクエントポール形ベアリングレスモータの巻線統合化」を検討する.このベアリングレスモータでは,従来,磁気浮上制御に回転角度情報を必要としなかったが,巻線統合化してもその特長を維持可能か検討し,理論計算,有限要素解析,および実機製作による実証を行う. 高速化:提案する定電流源モジュールを用いた三相7レベル電流形インバータに関しては,まず実機を製作し,インバータ動作を確認する.次いで,高速ベアリングレスモータに適用し,空転および負荷試験を実施する.さらに今後は,新たに「三相7レベル電流形インバータとリニア電流形アンプの統合化」を検討し,二相,三相,あるいは多相のベアリングレスモータで,7レベルの振幅変調電流にてトルクを制御し,リニア電流アンプにて浮上力を制御する新しいベアリングレスモータのインバータ回路を提案し,回路シミュレータにより検証を行う.
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