本研究では,磁気浮上ベアリングレスモータにおいて,これまでにない新しいインテグレーション化と高速化を目的としている.具体的には,従来,磁気浮上巻線と電動機巻線が別々に固定子コアに施されていた巻線を1種類の巻線に統合し,モータ構造の簡素化とトルク増大,および高速化を図る.これまで,巻線統合化に関しては,一般的な三相巻線の永久磁石形モータを,四相統合巻線構造を用いてベアリングレスドライブ化を行う理論を提唱している.本年度は,12スロット10極の四相統合巻線形ベアリングレスモータにて,これまでの交流電流制御から直流電流制御に変更することで,慣性中心でのさらなる高速化に成功した.また,8スロット2極の四相統合巻線形ベアリングレスモータを提案し,試作機を用いて磁気浮上回転に成功している.上述したベアリングレスモータはいずれも電気的に非対称な構造を有しているため,今後さらなる設計理論の確立が必要であり,今後の課題である.さらに,ベアリングレスモータの非制御方向は,減衰力が極めて小さいが,モータ電流の界磁調整分を制御することで,振動抑制に成功している.四相統合巻線形ベアリングレスモータでは,磁気浮上制御には回転角度の検出が必要であり,さらなる高速化を試みる場合,検出遅れやその補償,ディジタル制御処理時間等を考慮すると,回転角度の検出には問題が残る.本研究では,磁気浮上制御に回転角度検出が不要な,永久磁石バイアス型ホモポーラベアリングレスモータ(9スロット6極)を提案し,10万rpmでの安定な磁気浮上負荷回転に成功している.しかしながら,漏れ磁束が多く,内部渦電流損も大きいため,パワー密度および効率に課題が残っていた.本年度は,さらなる高パワー密度化を図り,コンシクエントポール形高速ベアリングレスモータの設計を行った.今後は,さらなる設計検討と実機検証を行う予定である.
|