下肢麻痺患者の歩行を支援する外骨格型デバイスの運動支援タイミングと患者の歩行意思の同期は、一つの課題となる。そこで、本研究では、健常者が杖を使って歩行した際の各関節軌跡を計測し、主成分分析(PCA)を用いて杖と脚動きの関係(シナジー)を抽出し、患者が操作しった杖の動きから提供する歩行運動をリアルタイムに再構成するアルゴリズムを提案した。また、歩行時の安定化を行う為、杖の初期運動から歩行周期と歩幅を予測し、予測された歩行周期と歩幅、非線形倒立振子モデルを用いてZMP軌道を予測し、予め与えられた目標ZMPへ追従するように股関節軌道を修正するアルゴリズムを実現した。GAZEBOソフトウェアを用いた計算器シミュレーションにて杖歩行を再現し、姿勢安定化制御にて、歩行中のZMP軌道のトラッキングエラーが44%減少し、図7に示すように連続歩行が実現できることを確認した。 一方で、人の運動を直接支援する身体装着型支援機器は、その機器の持つ重さや体積によって、機器を装着する前に行っていた本来の運動が実現できなくなることがある。例えば、走行を支援する為に下肢に装着した支援機器では、その機器の持つ慣性によって運動負荷が増加するだけでなく、その機器の持つ体積によって、走行時の脚軌道が部分的に変わってしまう。よって、膝関節内側に厚さの異なるブロックを装着して走行した際に、走行への影響を実験により評価した。歩行速度は2.5m/sとし、被験者7名にて、モーションキャプチャシステムにて運動を計測した。実験の結果、厚さ10mmまでは心拍への影響が無い反面、既に左右方向の着地位置に変化が現れ、厚さ20mmでは心拍にも悪影響が見られた。よって、走行支援機器を両脚内側に装着する場合には、片脚あたり厚さ10mmにすることが望ましく、少なくとも20mm以下でないと心拍へ悪影響を及ぼすことが判った。
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