研究課題/領域番号 |
17H03206
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横川 隆司 京都大学, 工学研究科, 教授 (10411216)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子ロボティクス / マイクロ・ナノデバイス / 生物物理 / 分子モーター / ナノバイオ |
研究実績の概要 |
2018年度は、主に以下の3つの課題について取り組んだ。課題1:微小管重合速度のリアルタイム計測。全反射蛍光顕微鏡を用いて、微小管の伸張速度を計測した。2017年度までのバルク計測法では、低濃度チューブリン使用時の比較的重合速度が低い場合は計測が可能であったが、高濃度のチューブリン存在下では伸張速度が速すぎるため、伸張速度を計測することが困難であった。そこで、高温チャンバ内に設置したフローセルを用いて、全反射蛍光顕微鏡により高濃度チューブリン使用時の重合速度が高い場合のリアルタイム計測を可能にした。これにより、数100 uMという高濃度のチューブリン存在下においても重合速度を計測することができ、微小管の曲げ剛性との関連を調べることができた。課題2:微小管の曲げ剛性が重合速度以外のどのような要素によって影響を受けるかを評価した。これまでに確立した、微小管の一端を固定する分子系と画像処理アルゴリズムを用いて、微小管結合タンパク質の影響を調べた。しかし、曲げ剛性は微小管結合タンパク質の種類や結合方法によりばらつき、一貫性を持った説明ができる結果には至らなかった。課題3:金ナノピラーを用いてキネシン分子の間隔を定義する技術を確立した。既にナノピラーの加工技術は確立していたが、kinesin-1とkinesin-14についてそれぞれに応じた表面修飾により、特異的に金ナノピラー上にタンパク質を固定することに成功した。その分子間隔の測定についても完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り2017年度に微小管の曲げ剛性が重合速度に依存することを示したが、高濃度のチューブリン存在下では重合速度を計測できていなかった。2018年度はこれを実現すると共に、予定していたナノピラーを用いたパターニングも二種類のモータタンパク質について実現しているため。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までの研究を通して、“分子シャトル”設計における曲げ剛性とキネシン分子間隔を設計する基盤技術が整った。このため、2019年度は予定していたこれら既知の条件を最適化して分子分離システムを効率化することに取り組む予定であった。しかし、ナノピラーを用いた分子シャトルの運動において、キネシンの種類によってその運動速度が異なることを見出した。そこで、曲げ剛性とキネシン分子間隔を規定した環境で、なぜ微小管の運動速度が異なるのかを評価することで、キネシンの種類に依存した生物学的な意義を理解できるのではないかと考えた。よって、分子分離システムの効率化を図るのではなく、2019年度は以下の課題に取り組む予定である。課題1:微小管の曲げ剛性が微小管結合タンパク質の影響によりどのように変化するかを調べる。これまでに実施した微小管結合タンパク質に加え複数種を検討すると共に、その添加方法についても条件を検討する。課題2:キネシン分子の間隔を定義した基板を用いて、キネシンの種類に依存した微小管の運動速度や曲率半径を評価する。これにより、微小管の曲げ剛性や分子間隔の違いがもたらす運動様式を明らかにする。
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