研究課題/領域番号 |
17H03207
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
神野 伊策 神戸大学, 工学研究科, 教授 (70346039)
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研究分担者 |
譚 ゴオン 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (00806060)
肥田 博隆 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60402509)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 圧電 / 薄膜 / 結晶構造 / シンクロトロン放射光 / PZT |
研究実績の概要 |
PZTは電界を印加した際,逆圧電効果によりひずみが発生するが,PZT薄膜の場合基板による拘束や配向制御等の影響によりバルクPZTセラミックスとは異なる圧電ひずみが生じることが報告されている.一方,その圧電ひずみの詳細,特に微視的な結晶ひずみと圧電素子として出力される圧電ひずみおよび圧電定数との関係を明らかにすることで,PZT薄膜の圧電定数向上および応用に即した結晶配向についての指針を示すことができる.H30年度は昨年度に引き続き,スパッタ法で作製したエピタキシャルおよび多結晶PZT薄膜に電界を加えながらXRD(X-ray diffraction)パターンの測定行い,圧電ひずみの微視的な観測を行った. シンクロトロン放射光によるOut-of-plane測定で得られた圧電ひずみから圧電定数d33,fを算出し,格子定数の変化から得られる圧電定数を算出した.一方,圧電薄膜と基板から構成されるユニモルフカンチレバー法により圧電定数e31,fを測定し,放射光測定によるd33,fと比較した.これらの圧電定数について,特に電圧依存性の比較によりPZT圧電薄膜の圧電性の起源を明らかにすることができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PZT圧電薄膜の微視的な結晶構造変化と,カンチレバー法による巨視的な圧電定数との関係を明らかにすることができた. Pt/MgO基板上の(001)PZTエピタキシャルPZT圧電薄膜およびPt/Si基板上多結晶PZT膜の圧電ひずみをSPring-8の波長1Åのシンクロトロン放射光を用いた.圧電ひずみの測定は,PZT圧電薄膜の上下電極間にDC電圧印加ながらOut of Plane およびIn-Planeの2θ/θX線回折測定により評価した.エピタキシャルPZT薄膜において,Out-of-planeおよびIn-planeの放射光XRD測定の結果,負バイアスの電圧印加で面外方向に格子が伸びている一方で面内では縮んでいることが確認できた.一方,多結晶PZT膜においても同様に電圧印加による結晶ひずみが明瞭に観察できた. シンクロトロン放射光によるOut-of-plane測定で得られた圧電ひずみから圧電定数d33,fを算出し,この結果とカンチレバー法により測定した圧電定数e31,fとを比較検討した.カンチレバー法で測定した圧電定数e31,fの印加電圧依存性は,エピタキシャルPZT薄膜ではほぼ一定の値を示し,結晶ひずみから算出したd33,fもほぼ同様の傾向を示した.一方,多結晶PZT薄膜では,e31,fが印加電圧とともに増加し,d33,fも同様の傾向を示した.これらの結果は,圧電ひずみが結晶構造の変化と密接に関連していることを示しており,結晶構造の変化を詳細に観察することにより,圧電薄膜の圧電性の特徴を把握することができ,更にその向上の指針を得ることができるものと期待される.
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今後の研究の推進方策 |
PZT圧電薄膜で得られた圧電ひずみの微視的な評価技術を非鉛圧電薄膜に適用することにより,その圧電性の特徴を明らかにするとともに圧電定数向上の指針を明らかにする.特に今年度はSi基板上にPZT薄膜のエピタキシャル成長技術に取り組み、組成およい配向が圧電定数に与える影響を明らかにする。
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