研究課題/領域番号 |
17H03216
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
道木 慎二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10273260)
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研究分担者 |
舟洞 佑記 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20633548)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モータドライブ / 耐故障性 / センサレス制御 / パワーエレクトロニクス / 電気自動車 |
研究実績の概要 |
提案者は,日本が今なお世界に対して優位性を有するモータドライブシステム技術が今後も優位性を維持するためには耐障害性向上(Fault Tolerant, Fail Safe化)が不可欠であると考える.そこで本研究では,耐故障性向上において一般的な『時期回路・電気回路・センサ等に単に予備を設ける「同種(ホモジーニアス)的な多多相化・多重化」』に加え,システム制御における状態推定によるセンサレス制御の考え方を利用し,『「あるセンサによる測定値」を「他のセンサを組合わせることで得られる推定値」と相互に補完しあうことで,推定精度,故障検出,故障時の補完などを可能とする「異種(ヘテロジーニアス)的な多重化」』による,一層高度な耐故障性向上に挑んでいる. 問題設定として,位置センサ・電流センサのいずれか一方が故障する場合を想定し,その際にも運転継続可能な制御系の構築,およびその際の制御性能や運転継続可能な条件などを明らかにすることを目的として,研究を進めている.これまでに,故障として各センサの固着及び一定の雑音印加を想定し,電流センサの故障のみ,およびいずれか一方の故障時において,継続した駆動が可能となるアルゴリズムを提案した.提案手法では,ロボットにおいて複数センサを利用した自己位置推定時に利用されるアルゴリズムをを参考に,センサの値と複数の状態推定手法による推定値を相互に比較し,他の値と異なる,すなわち故障したであろう値を排除した上で統合した値を利用する「統合法」の永久磁石同期モータの電流制御系へ適用を提案した,提案手法によって,コンピュータシミュレーション上で各センサの故障時にモータの駆動が継続可能となることを確認した. また,提案するアルゴリズムを実装可能な制御器を選定し,実験装置の構築を行い,実機実験を行う準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況が「やや遅れている」理由は,初年度において当初企業からの提供を想定していた高性能電力センサの提供が不可能になったことを踏まえ,制御アルゴリズム,実験装置の再検討を行う必要があったため影響が大きく,初年度の遅れを2年目に完全に吸収することができなかったためである. 2年目終了時までに,制御アルゴリズムの再検討の点では,ほぼ予定通り電流センサの故障時におけるアルゴリズムの提案に至り,コンピュータシミュレーション上では,位置センサ故障のみ,電流センサの故障のみ,およびいずれか一方の故障時における耐故障性の検討を終えることができた. 一方で,実験装置に関する面では,昨年度,実験環境の再検討を踏まえ再設計した実験装置の構築に時間を要し,本格的な実験による提案するアルゴリズムの検証に着手することができなかった.このため,提案するアルゴリズムの検討がシミュレーションに留まってしまった.実験装置における検証で新たな課題が出る可能性は否定できず,その結果によっては,アルゴリズムの再修正が必要となる可能性が残存する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる本年度は,この2年間の成果を踏まえ,当初の目的達成に向けて継続的に研究を推進する. まず,昨年度までにコンピュータシミュレーション上では,位置センサ故障のみ,電流センサの故障のみ,およびいずれか一方の故障時における耐故障性の検討を終えることができたので,本年度は,順次,昨年度,導入・構築した実験環境において,順次,実験による検証を進める. 同時に,実用性を考慮した際に不可欠であるパラメータ変動による影響についても検討を進める.抵抗・インダクタンスなどのパラメータの変動は状態推定に影響を及ぼすために,状態推定値を利用した耐故障性に影響を及ぼすことは明らかである.幸いなことに,従来の各種センサレス制御の検討において,パラメータ変動が状態推定に及ぼす影響は検討されており,それを足掛かりとして,提案するシステムにおける耐故障性への影響について,前年度,着手したが,継続して検討を試みることで,提案する手法の実用的な適用限界を明らかにしていく. 最終的に実機実験を検証を行う予定であるが,昨年度までに実機実験の環境自体の構築はほぼ終え,位置センサのみの故障について検討を実施済みであるため,本年度はまず電流センサの故障についての評価,更には,位置センサまたは電流センサの一か所の故障に対する検証までの実施を行う. このように,当初目的としたシステムの提案,シミュレーション,実機検証までを終えたのち,最終的に提案するシステムの評価を行う.提案するシステムは,正常な状態に対してなからず性能劣化を伴うため,その劣化の程度やその程度を決定づける要因が何であるかを明らかにすることが重要であるからである.以上の点を抑えたうえで,最終報告書にまとめる.
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