研究実績の概要 |
提案者は,日本が今なお世界に対して優位性を有するモータドライブシステム技術が今後も優位性を維持するためには耐障害性向上(Fault Tolerant, Fail Safe化)が不可欠であると考える.そこで本研究では,耐故障性向上において一般的な『時期回路・電気回路・センサ等に単に予備を設ける「同種(ホモジーニアス)的な多相化・多重化」』に加え,システム制御における状態推定によるセンサレス制御の考え方を利用し,『「あるセンサによる測定値」を「他のセンサを組合わせることで得られる推定値」と相互に補完しあうことで,推定精度,故障検出,故障時の補完などを可能とする「異種(ヘテロジーニアス)的な多重化」』による,一層高度な耐故障性向上に挑んでいる. 問題設定として,位置センサ・電流センサのいずれか一方が故障する場合を想定し,その際にも運転継続可能な制御系の構築,およびその際の制御性能や運転継続可能な条件などを明らかにすることを目的として,研究を進めている.これまでに,故障として各センサの固着及び一定の雑音印加を想定し,いずれか一方のセンサ故障時において,継続した駆動が可能となるアルゴリズムを提案した.提案手法では,ロボットにおいて複数センサを利用した自己位置推定時に利用されるアルゴリズムを参考に,センサの値と複数の状態推定手法による推定値を相互に比較し,他の値と異なる,すなわち故障したであろう値を排除した上で統合した値を利用する「統合法」を永久磁石同期モータの電流制御系へ適用することで,いずれかのセンサ故障時にモータの駆動が継続可能となることを確認した.また,提案手法による正常時の制御性能が,各状態推定法の精度に依存して劣化すること,その程度は統合時の重みにより,故障時の性能と正常時の性能のトレードオフとなることを明らかにした.
|