研究課題/領域番号 |
17H03218
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 武恒 京都大学, 工学研究科, 特定教授 (30303861)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全超伝導 / 誘導同期回転機 / 低速発電機 / かご形巻線 / 液体窒素冷却 |
研究実績の概要 |
高温超伝導テープ材および同巻線の直流・交流通電特性を実験的・解析的に検討した。また、全高温超伝導誘導同期回転機の試作機について、負荷試験を実施した。その結果、固定子巻線の一部が焼損する事象が発生した。従って、再度設計の見直しを行った。本検討によって、外部擾乱に対してよりロバストな高温超伝導固定子巻線技術を確立するための知見が得られた。具体的な実績の概要を下記に説明する。 (1) 固定子巻線用高温超伝導テープ材の直流ならびに交流通電特性の測定を液体窒素冷却条件下(65 K~77 K)で実施し、理論評価式による定式化を行った。また、高温超伝導巻線(固定子巻線、回転子巻線)の試作の際のハンダ施工法について実験的に検討した。 (2) 全高温超伝導誘導同期回転機の無負荷試験と軽負荷試験を行った。軽負荷試験時に固定子巻線の一部が焼損する事象が発生し、その原因を検討した。また、上記試験結果に基づいて、2次元電磁界解析(有限要素法)によって設計の一部を見直した。その際、高温超伝導固定子巻線構造について、従来の分布巻とトロイダル巻の優劣を2次元電磁界解析に基づいて検討した。 (3) 全高温超伝導誘導同期発電機を液体窒素浸漬冷却条件下で回転試験できるクライオスタットを完成させた。同クライオスタットでは、試作機のシャフトは上向きに設置され、トップフランジ上に設置された永久磁石モータによって機械入力を与えることが可能である。また、試験の際の駆動装置や計測・制御系も完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超伝導固定子巻線の試作を実施したが、一部焼損してしまい、その問題を回避する検討を実施した。ただし、これまで全超伝導回転機の試作・試験例が世界的にも殆ど無い現状において、上記トラブルから寧ろ貴重な知見が得られ、より完成度の高い超伝導固定子技術の実現に向けて有意義であったと考えられる。 以上のことから、H30年度はやや遅れていると判断したが、設計や試作の手配はほぼ完了していることから、H31年度に十分キャッチアップできる。高温全超伝導機として初の連続発電試験に向けて、さらに研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度の研究結果に基づいて、外乱に対してロバストなHTS固定子巻線技術の開発を進める。当初予定していた設計結果を見直し、1 kW級機の試作を急ぐ。同機が完成後に、定常回転試験(無負荷試験、回転子拘束試験、負荷試験)を実施し、等価回路を導出しておく。次に、異なる回転数における発電試験を実施し、上記等価回路によって得られた解析的特性との比較検討を通して、開発した設計法の妥当性を検証する。 上記小型機による検討結果に基づき、数百kW~数MW級機の電磁設計を実施する。さらに、本研究で開発した高温超伝導誘導同期発電機の優位性ならびに適用可能な応用分野を明確化し、本科研費で得られた一連の成果を総括する。本研究が完成することによって、未だ世界的にも設計法が確立されていない高温超伝導固定子巻線技術、および高温超伝導誘導同期発電機について新しい知見が得られ、それら研究が加速すると期待される。
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