研究課題/領域番号 |
17H03220
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
勝木 淳 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 教授 (80233758)
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研究分担者 |
上野 崇寿 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (30508867)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パルス電界 / 液状食品の低温殺菌 / 高エネルギー効率 / 温熱との併用 / パルスパワー電源 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、タンパク質を主成分とする液体食品を安全かつ高品質に殺菌するため、50k∨/cm級の超高電界パルスとタンパク質を変性させない温熱を組合せて、サルモネラ菌等を含む導電性液体を、高強度(減菌率6桁以上)、高エネルギー効率(20kJ/kg以下)にかつ高速(1トン/時以上)に殺菌する方法および基盤技術を確立することである。H30年度は、H29年度の成果を基にして、次の4つの課題に取り組んだ。 (1)蛍光顕微鏡に温度調節可能な高電界パルス印加装置を組み込んで、菌の生体応答をリアルタイムで解析可能なシステムを構築し、これを用いて、パルス印加後の膜傷害や膜障害の回復現象などを明らかにした。特に、パルス印加後に温熱負荷を与えた場合やパルス印加時に温熱を与えた場合の菌に着目し、本殺菌法におけるパルスと温熱の役割について理解を深めた。 (2)液卵を用いた殺菌試験を行い、H29年度に用いた合成水溶液(CMC)の場合に比べて殺菌効果が弱まることを明らかにした。液卵の顕微鏡観察を基に、菌が黄身および白味由来の粒子状成分と混在する状況を物理モデル化し、電界分布の数値計算を行った。その結果、粒子状成分が菌にかかる電界を弱めることが明らかとなり、殺菌効果が弱まる主因となりうることを示した。 (3)(1)で得られた成果を基に、パルス波形や温度履歴などのプロセス条件を最適化し、エネルギー効率19kJ/kgを達成した。 (4)殺菌処理の高速化のために、SiCパワーデバイスを用いたマルクス回路構成の繰り返しパルス電源を開発した。最大200 Hzで稼働し、立上がりと立下がり時間がともに100ns、パルス幅は200n秒~1μ秒の間で調整可能で、フラットトップな電圧・電流波形を10Ωの負荷に連続して供給可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するためにH30年度に掲げた4つの課題のそれぞれの達成状況は以下のようである。 (1)超高電界パルスおよび温熱の菌への作用の解析:蛍光顕微鏡に温度調節可能な高電界パルス印加装置を組み込んで、菌の生体応答をリアルタイムで解析可能なシステムを構築し、これを用いて、パルス印加後の膜傷害や膜障害の回復現象などを明らかにした。特に、パルス印加後に温熱負荷を与えた場合やパルス印加時に温熱を与えた場合の菌に着目し、本殺菌法におけるパルスと温熱の役割について理解を深めた。このことに関して論文投稿した。 (2)菌を懸濁した液卵の殺菌および液卵成分の殺菌への影響を解明:液卵を用いた殺菌試験を行い、H29年度に用いた合成水溶液の場合に比べて殺菌効果が弱まることを明らかにした。液卵の顕微鏡観察を基に、菌が黄身および白味由来の粒子状成分と混在する状況を物理モデル化し、電界分布の数値計算を行った。その結果、粒子状成分が菌にかかる電界を弱めることが明らかとなり、殺菌効果が弱まる主因となりうることを示した。このことに関して論文投稿した。 (3)殺菌メカニズムに基づいたプロセスの最適化により効率20kJ/kgを達成:(1)で得られた成果を基に、パルス波形や温度履歴などのプロセス条件を最適化し、エネルギー効率19kJ/kgを達成した。 (4)ギャップスイッチを用いない高繰り返し高電圧矩形パルス電源の開発:殺菌処理の高速化のために、SiCパワーデバイスを用いたマルクス回路構成の繰り返しパルス電源を開発した。最大200 Hzで稼働し、立上がりと立下がり時間がともに100ns、パルス幅は200n秒~1μ秒の間で調整可能で、フラットトップな電圧・電流波形を10Ωの負荷に連続して供給可能である。 (3)および(4)の成果を根拠にして、実用化を目指した高速処理が可能なパイロット試験機を製作中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度、および30年度は当初計画通りにおおむね順調に進展した。最終年度となる平成31年度も当初計画通りに進める予定である。
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