研究課題/領域番号 |
17H03226
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 恭 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50335379)
|
研究分担者 |
宮崎 孝道 東北大学, 工学研究科, 技術一般職員 (20422090)
室賀 翔 秋田大学, 理工学研究科, 特任講師 (60633378)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 電子・電気材料 / スピントロニクス / 磁性 / 超薄膜 / 金属物性 / 高周波磁気計測 / ダンピング定数 / 磁気ひずみ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、新規省エネ型スピントロニクスデバイスの基本要素パラメータである磁性超薄膜の磁化ダイナミクスに着目して、その新規計測技術の構築と、その計測技術を用いた磁性超薄膜における磁化ダイナミクスのメカニズム解明を行うことを目的としている。本年度の実績は以下の通りである。 1.ダンピング定数と飽和磁気ひずみとの同時計測が可能なマイクロストリップ線路型プローブによる新規高周波磁化計測技術を提案した。本計測技術では、磁性薄膜へ応力負荷した場合と無負荷の場合の強磁性共鳴(FMR)周波数の外部磁界による変化を測定し、各外部磁界での応力負荷・無負荷時のFMR周波数の差分と、応力負荷時の磁性薄膜の曲率半径を利用して飽和磁気ひずみを評価する。また、応力無負荷時のFMR周波数とそのFMRピークの半値幅からダンピング定数を評価する。実際に、Ni-Fe、Fe-SiといったFe系軟磁性合金薄膜の飽和磁気ひずみを本計測技術で評価したところ、従来の光てこ法により得られた値と同程度の値が得られた。また、これらの薄膜のダンピング定数に関しては、FMRピークの半値幅を共鳴磁界の半値幅に換算することによって、従来の周波数掃引型ブロードバンドFMR測定に比べて高精度評価が可能であることがわかった。したがって、本計測技術が妥当であることが確認できた。 2.磁性合金超薄膜におけるダンピング定数と飽和磁気ひずみの相関に関しては、膜厚10 nmのNi-Fe合金薄膜を対象として開発した本計測技術を用いて検討した。ゼロ磁気ひずみ近傍の80at.%のNi組成を境にして、飽和磁気ひずみの符号に依存してダンピング定数の増加量が大きく変化した。この結果は、50 nm厚のNi-Fe合金薄膜の場合と類似している。したがって、Ni-Fe合金薄膜では、膜厚に関係なくダンピング定数と飽和磁気ひずみとの間に相関があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は「新規計測技術の構築」と「その計測技術を用いた磁性超薄膜における磁化ダイナミクスのメカニズム解明」に関して検討した。とりわけ、本研究課題の柱に掲げている新規計測技術の構築に関して、磁性超薄膜および薄膜を用いて得られた磁気パラメータの妥当性が検証できた。それに加えて、従来から主張してきたダンピング定数と飽和磁気ひずみの相関に関して、10 nm厚のNi-Fe合金磁性薄膜を対象として検討したところ、これらのパラメータの相関関係を確認できた。以上に示した結果から、本年度の研究計画はおおむね順調に遂行できていると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
構築した新規計測技術に関しては、磁気ひずみの大きさの異なるFe系およびCo系磁性超薄膜を測定対象として、本測定の材料適用範囲を確認する。また、新規計測技術を用いた磁性超薄膜における磁化ダイナミクスのメカニズム解明に関しては、従来のNi-Fe合金軟磁性膜だけでなく、磁気ひずみがゼロとなるSi組成域を有するFe-Siや巨大磁気ひずみを有するFe-Gaといった他の合金薄膜についても検討する。
|