研究実績の概要 |
移動通信システムの発展に伴って,LiNbO3(LN)やLiTaO3(LT)などの圧電結晶を用いた弾性表面波(SAW)フィルタの高周波化・広帯域化が強く要請されている.縦型リーキーSAW(LLSAW)は,通常のSAWと比べて1.5~2倍の位相速度を持つため高周波化に有利であるが,非常に大きな伝搬損失を有する.本研究では,異種材料接合技術を用いてLLSAWの高結合化を図り,次世代移動通信システム端末に適用可能な高周波フィルタを実現させることを目的として研究を遂行した.最終年度の主な研究成果を以下に示す. 1.昨年度に続いて,LN薄板,またはLT薄板と水晶の境界にアモルファス薄膜を設けて残留応力を抑制する構造を検討した.原子層堆積法を用いてAl2O3アモルファス薄膜を中間層としてLNと水晶の接合境界に成膜したところ,3.7 MPaの接合強度が得られた.また,中間層を設けた場合のLLSAWの共振特性を理論的に検討し,最適パラメータを明らかにした. 2.LN/アモルファス層/水晶構造における横波型LSAWの解析により,SiO2を中間層とすると,高結合化と高安定化が可能であることを明らかにした.薄板を27°Y カット付近とし,支持基板を薄板よりも高音速なAT90°X-Q とすれば,27%程度の結合係数,0.01 dB/波長以下の伝搬減衰,LN単体の1/2の周波数温度係数を同時に示した. 3. 36°YX-LT/AT90°X-Qにおける横波型LSAWに対して,外注にて波長1.8 μmのAl製IDTを作製し,2.2 GHzにおいて共振特性を評価した.LT単体試料の測定値と比較すると,LTの板厚が0.6 μmのとき,アドミタンス比は53 dBから81 dBに,比帯域幅は3.7%から4.2%に,共振Q,反共振Qは,535,185から,1,471, 1,553にそれぞれ増加し,実験的に格段の高性能化を達成した.
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