研究課題/領域番号 |
17H03235
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
堀井 滋 京都先端科学大学, 工学部, 教授 (80323533)
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研究分担者 |
下山 淳一 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20251366)
一瀬 中 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 上席研究員 (70371284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 回転変調磁場 / 磁場配向 / 双晶 / 磁気異方性 |
研究実績の概要 |
第4年度では、最も磁気異方性の高いRE123物質の一つであるRE=Dyを選択し配向体を作製した。過去の当研究グループの研究で、1テスラの回転変調磁場でも2軸配向が認められた物質である。試料の回転変調を必要としない永久磁石を使った回転磁場発生装置を用いて、0.8テスラ程度の回転変調磁場にてエポキシ樹脂中でDy123の磁場配向を試みたところ、2軸配向が実現できることをX線極点図測定から明らかにした。これを踏まえ、第3年度で得たスラリーの粘性制御法と併せて、Dy123の2軸配向グリーンシート(1.5mm厚)を作製した。相対密度50%程度の「グリーンシートレベルであるが、上面、底面、中間の3面のX線極点図測定からどの面も2軸配向が認められた。永久磁石レベルの磁場で2軸配向Dy123シートを作製できることを原理的に示した。 また、第3年度の知見から回転磁場による磁化容易軸配向実現には粘性の効果が大きく寄与する。これを低い磁気異方性をもつRE=Y(Y123)に対して、低粘性媒体を利用した2軸配向を試みた。試料の回転変調を必要としない永久磁石を使った回転磁場発生装置(0.8テスラ程度)でY123スラリーを磁場配向させると2軸配向が実現できた。試料回転が不要で、磁気異方性に合わせた分散媒粘性を選択することにより、当初不可能と思われた磁気異方性レベルの物質も2軸配向できるが示された。 TEMおよび制限視野EDを利用したDy123粉末の双晶組織観察を引き続き行った。FIB加工での試料破損など歩留まりは良くないが、一部双晶組織の観察に成功した。明らかな傾向として、c面内に形成される2つのドメインの存在比はおおよそ1:2程度であることを見出した。エポキシ樹脂中2軸配向体からFIBで切り出し観察しているので、少なくとも不均質ドメイン比が2軸配向に必要な磁気異方性の発現に寄与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転変調磁場を用いて磁場配向現象については、物質の磁気異方性だけでなく、スラリーの状況を最適化することで配向度が向上することを実験的に確認し、また、透過型電子顕微鏡による双晶組織観察については、歩留まりの問題はあるもののいくつかの試料について双晶組織を明らかにし不均質なドメイン比を明らかにした。磁場配向体から切り出した配向粉末の直接的組織観察がポイントであり、配向粉末の微細組織を直接明らかにできたことからも、おおむね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においても、基本的に研究計画通りに遂行する。引き続き、高温超伝導物質RE123配向体について、物質側、磁場印加条件、スラリー側の諸条件を制御因子として、磁気異方性増強や配向度の向上の指針を得る。焼結配向体の作製および臨界電流特性の評価もひきつづき行う。観察試料の加工プロセスの改善を進めてTEMによる双晶組織を明らかにする。最終的に、磁気科学的プロセスによる三軸配向高温超伝導材料の作製指針を得る。
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