研究課題/領域番号 |
17H03239
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
三浦 正志 成蹊大学, 理工学部, 教授 (10402520)
|
研究分担者 |
神原 陽一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50524055)
一野 祐亮 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90377812)
小黒 英俊 東海大学, 工学部, 講師 (90567471)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 超伝導 / 熱電材料 / フレキシブル基板 / ナノ歪 / 電気材料 |
研究実績の概要 |
ナノ構造制御によってRE-Ba-Cu-O超伝導やRE-Cu-O熱電変換薄膜にBaZrO3等のナノ異相を導入することで、超伝導では磁場中臨界電流密度、熱電変換では熱電変換効率が飛躍的に向上する。また、我々は母相に加わる歪は超伝導特性や熱電変換効率に大きく影響することを明らかにしてきた。そこで本課題では、これまで特性低下要因であった歪を積極的に母相内にナノスケールで導入する技術を確立し、フレキシブル電気材料(フレキシブル金属基板上薄膜)の超伝導特性や熱電変換効率の飛躍的向上を目指している。2018年度は、成蹊大学が母相に対してPLD法およびMOD法を用いてコヒーレントナノ柱状欠陥及びインコヒーレントナノ粒子を導入し、超伝導相のキャリア濃度や磁場中超伝導特性に及ぼす影響について検討した。名古屋大学では、気相法により熱電材料であるRE2CuO4薄膜の作製を行い、ポストアニールが特性に及ぼす影響を検討した。慶應義塾大学では、REBCO超伝導薄膜へのアニオン置換としてCuサイトへのS, Se, F, Cl置換を検討した。また、東海大学は、2017年度に引き続き、フレキシブル金属基板上に作製したREBCO超伝導薄膜に、機械的に圧力や曲げ歪を加えることで結晶に歪を印加し電気特性を測定し、これにより各歪を印加した際の超伝導特性に及ぼす歪の影響を検討した。これまでの業績として, NPG Asia Materialsやnpj Quantum Materialsを含む査読付き学術論文13報、国際学会での招待講演1件、国際学会29件、国内学会19件で研究成果を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に記したように、2018年度の目的に向けて、各研究グループがそれぞれの役割を果たし、当初の予定に近い成果を得ることができた。当初の実施目標であった(c)格子定数の異なるバッファ層によるab面方向へのナノ歪制御技術の確立及び(d)ナノ異相導入によるc軸方向へのナノ歪制御技術の確立を実施し、ナノ歪が電気特性に及ぼす影響に関して、一定の成果が得られた。これらの成果は、Nature関連論文npj Quantum Materials をはじめとして、Physical Review Applied, Supercond. Sci. Technol., Jpn. J. Appl. Phys., IEEE Trans. Appl. Supercond. など8件に掲載された。学会での成果発表としては、国際学会21件、国内学会14件で研究成果を発表した。現在、コヒーレントナノ柱状欠陥及びインコヒーレントナノ粒子が超伝導特性に及ぼす影響に関する成果を学術論文として投稿準備中である。 以上のようにグループ全体としておおむね順調と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2017年度、2018年度で得られた「ナノ歪導入技術」とこれまで培ってきた「ナノ異相導入技術」を融合させる。 超伝導や熱電変換材料の特性向上に効果のある「ナノ歪導入技術」は、(a) 機械的歪印加による有効な歪印加方向の解明から得られた最適歪を基に、 (c)異なるバッファ層によるab面へのナノ歪制御技術の確立の結果よりab面への最適歪を印加可能なバッファ層を選定し、(d)ナノ異相導入によるc軸方向へのナノ歪制御技術の確立の結果よりc軸への最適歪を印加可能なコヒーレント異相材料を選定する。一方、量子化磁束運動の抑制とフォノン散乱に効果のある「ナノ異相導入技術」は、既に成蹊大で実績を有する母相への影響が非常に少ないインコヒーレントBaZrO3ナノ粒子をサイズ・密度を制御し、電気材料薄膜に導入する。成蹊大と名大は、それぞれ、成長様式の異なるMOD法とPLD法を用いて、ナノ異相+ナノ歪融合薄膜線材を創製する。慶應大は、(b) 化学ドーピングによるc軸方向へのナノ歪制御技術の確立の結果より最適アニオン置換元素と置換量を決定し、成蹊大と名大で創製された融合薄膜線材に酸素アニール処理時にアニオン導入技術を用いて母相内にナノ歪を導入する。電気特性は、超伝導特性を成蹊大学が評価し、熱電変換性能を名大が評価する。東海大は、成蹊大と名大で創製された融合薄膜線材の電子分布状態を明らかにするために中性子回折結果をもとに電子密度分布をシュミレーション解析し、ナノ歪が超伝導特性及び熱電変換特性に及ぼす影響を解明する。
|