これまでの総括として、トランジスタレーザにおける静特性、動特性に向けた体系的な理論整理を行った。静特性においては、トランジスタレーザは、一部の電流を意図的に活性層に入れないという構造によって、高い動特性を達成するため、本質的にスロープ効率(電流に対する光出力応答)は下がる。そのため、電力変換効率としては従来のレーザに比べて低く抑えられるため、放熱性の確保が非常に大切である。実際にその放熱性を改善することによって、長波長帯トランジスタレーザとしては、最高連続発振温度90°Cを実現した。具体的には、変調のための伝送線路を考慮した、金属配線を作製し、これを放熱板としたことによる。 一方、動特性については、理論計算により、寄生容量に対して、強い影響をうけることを明らかにした。実際に変調信号を乗せた場合、鋭いピークが現れるが、作製したデバイス内部の抵抗、寄生容量を含む等価回路モデルにより、フィッティング可能であることを示し、その結果から、寄生容量を低減することで、このピークを抑制し、良好な高速変調が実現でいることを見出した。具体的には共振器の長さを100マイクロメートル程度にし、端面に高反射膜を成膜することによって、寄生容量に影響を受けず、高速変調が可能である。 以上により、長波長帯トランジスタレーザの設計指針を明らかにし、実際の作製プロセスも確立することができた。将来的に本技術を用いることにより、従来のレーザダイオードを超える変調帯域を実現できる可能性を見出した。
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