研究課題/領域番号 |
17H03248
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川江 健 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (30401897)
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研究分担者 |
徳田 規夫 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 教授 (80462860)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 電界効果トランジスタ / Pb(Zr,Ti)O3 / キャリアオフセット |
研究実績の概要 |
本研究が目標として掲げる「ワイドギャップ半導体ダイヤモンドに対する効率的なキャリア誘起、低損失・高効率なダイヤモンドパワーデバイスの実現」に対し、「巨大分極を有する強誘電体」をゲートとした電界効果トランジスタ(FET)の形成により、実応用を指向したパワーFETデバイスの創出を目指す。2年目の研究課題として、初年度に明らかにされた「強誘電体をゲートとする事により効率的なキャリア誘起が可能である」という実験事実に基づき、「巨大分極を有する強誘電体ゲートおよびFET構造のダイヤモンド上への作製」に取り組んだ。 具体的には、巨大分極を有する強誘電体としてPb(Zr,Ti)O3(PZT)に着目すると同時に、ダイヤモンドに対してより大きなバンドギャップを有するAl2O3を中間層としたMFIS型ゲート構造の作製を試み、ゲート特性を検証した。 作製したMFIS構造に関して、ダイヤモンド上にALD堆積したAl2O3中間層の上にPLD法を用いて直接堆積したPZTが比較的良好な結晶性と強誘電性を示す事を明らかにした。また、PZT堆積に伴うAl2O3中間層の絶縁性の劣化も生じない事が分かった。一方、PZT薄膜堆積時のプロセス温度に関して、ダイヤモンドチャネルへのダメージを考慮すると、非常にプロセスウィンドウが狭い事が明らかとなった。 以上の事より、本研究の根幹となるダイヤモンド上に巨大分極を有する強誘電体ゲート構造の形成に関して、良好なデバイス動作を念頭に置いたプロセス条件および強誘電体材料の選定(より結晶化温度の低いBiFeO3など)、さらに実デバイス構造を用いた動作検証が最終年度の課題となる事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
巨大分極を有する強誘電体PZTをAl2O3中間層を介して、ダイヤモンド上に直接堆積したMFIS型ゲート構造の作製を試みた。 作製したMFIS構造に関して、ダイヤモンド上のAl2O3中間層の上にPLD堆積したPZTは比較的良好な結晶性と強誘電性を示す事を明らかにした。一方で、PZT薄膜の結晶化に要するプロセス温度が630℃程度と高温であり、ダイヤモンドチャネルへのダメージ回避が非常に難しく、プロセスウィンドウが狭い事が明らかとなった。 この事実は、本研究課題の最終目標である「低損失・高効率ダイヤモンドFETの実現」に向けて、デバイス特性の劣化を引き起こす要因となる可能性が高く、看過できない。 以上の事より、「巨大分極誘起を用いた高効率キャリア誘起」に関する明確な原理実証を目指す為には、当該の問題に対し、実デバイス応用を念頭に置いたプロセス条件の改善および強誘電体材料の再選定が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の根幹となるダイヤモンド上に巨大分極を有する強誘電体ゲート構造の形成に関して、良好なデバイス動作を念頭に置き、「ダイヤモンドチャネルへのダメージを回避しつつ、強誘電体ゲートの良好な電気特性を実現する」プロセス条件の選定が重要となる。 具体的には、強誘電体の薄膜堆積法をCSD法に変更する事やアモルファス薄膜の堆積後にRTAを用いた超短時間熱処理などが有用であると考える。 また、プロセス温度を低減を主目的とし、強誘電体材料としてPZTより結晶化温度の低いBiFeO3などを選定し、実デバイスに適した「プロセスと材料」を明らかとし、原理検証に取り組む事を最終年度の主目的とする。
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