研究実績の概要 |
架橋グラフェンを利用した分子認識MEMSセンサの濃度検出下限を評価するため、表面応力測定による分子検出実験を行った。ターゲット分子を選択的に検出するため、レセプター分子で表面を機能化した架橋グラフェン上でターゲット分子の検出を行った。濃度依存性の評価と検出下限の評価を行った結果、検出下限150zMが得られた。これは免疫センサとしては最も感度の良いdigital ELISAを一桁超える検出下限値である。また、ここで得られた信号変化は光信号の検出を前提としているため、CMOSイメージセンサの回路を応用した検出回路の試作と動作確認をし、グラフェンMEMSセンサによるオンチップ測定の見通しを得た。 次に、架橋グラフェン上に吸着した分子の吸着量を定量するため、架橋部の固有振動数の計測による分子質量測定を行った。架橋グラフェンの固有振動数を高周波で測定可能な計測手法として、レーザー励起による振動計測法を用いた。共振測定の結果、処理前の共振周波数が8.60MHz、レセプター固定化後の共振周波数が6.88MHz、そしてターゲット分子吸着によって5.54MHzの共振周波数が得られた。分子吸着前後の共振周波数シフトから質量感度を算出すると13.2zg/Hzとなり、従来のシリコン共振センサの質量感度(~0.5ag/Hz)よりも約38倍優れた感度が示唆された。この質量感度は小型化することにより向上し、直径3um程度で1zg/Hzが実現できる見積もりが示せた。また、別の手段として、グラフェン共振型質量センサはひずみを加えることによってセンサ感度、検出下限の向上が期待できるため、架橋グラフェンの両端にパターニングしたレジストを熱収縮させ、ひずみ印加による共振特性を評価した。その結果、ひずみ印加によって、共振周波数が7%,Q値が22%向上する結果が得られ、感度向上の見通しを得た。
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