ワイヤレス通信システムにおいて、分散ノード群が協調して動作することでネットワーク全体の通信品質が向上する協調通信技術が知られている。本研究では、分散ノードの物理レイヤにおいてこれまで本格的に利用されてこなかったデータバッファを最大限活用することにより、システム設計自由度を上げ、従来の性能限界を上回ること目的とする。これにより、周波数帯域を増大させることなく実効送信レートと信頼性を向上させる。特に、オーバヘッドとパケット遅延を削減しながら、高いダイバーシティ効果が得られるバッファ利用協調通信プロトコルを提案し、将来の高速高信頼無線ネットワークを実現するための研究基盤確立に貢献する。 最終年度である2020年度は、事業期間を延長し、下記の項目について実施した。 ・全二重バッファ利用無線分散プロトコルにおける物理層セキュリティ 前年度までに考案・評価した全二重バッファ利用無線分散プロトコルをベースとして物理層セキュリティ技術に応用し、暗号を用いることなく完全秘匿性を達成する協調伝送方式を提案した。続いて、提案方式の理論解析を行い、秘匿レート、不稼働率、遅延の理論上限を導出した。さらに、提案方式の数値解析モデル化を行い、総合評価を行った。特に、複数のモードの中から全二重通信モードに優先度を与えることにより、実効秘匿レートを向上させることが確認できた。 これらの成果の一部については論文投稿を行っており、すでに採択に至っている。
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