研究課題/領域番号 |
17H03265
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片山 正昭 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60185816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光無線 / 光空間通信 / MIMO / 高密度アレイ / 光CDMA / 多元接続 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,工場等における産業機器のための通信ネットワークを光無線技術によって実現する上で不可欠な基幹技術を確立することを目的とする.研究では,多数の機器に通信を提供できるだけの通信容量を,目に安全なLEDを用い,一般的な電子部品と簡単な光学系で実現することを目指す.そのために,素子間隔が伝送距離に比して十分小さい「高密度アレイによる光無線MIMOシステム」について検討を行った.また将来の多対多通信の実現の基礎として,複数の子局からの信号を基幹ネットワークが同時に受信する多元接続方式について予備的検討,理論検討を行った. 具体的には,まず2素子アレイによる2×2光無線MIMOシステムの送受アレイ間距離と特性の関係,多素子化による通信速度向上を実験により明らかにした.従来の光無線MIMOシステム研究の多くは,数m以内の短距離通信において素子間隔を大きくとることで複数チャネルを実現しようとしているものであった.これに対し本研究では10m程度の距離で,それに比して十分小さい素子間隔の高密度アレイを用いた光無線MIMOシステムによるものであり,実際に実現できた8Mbpsの速度を含め新規性の高い成果である. この実験により,可視光での通信は,照明光の影響が大きく,また送信光の色による室内照明環境の劣化という問題があることが明らかになった.そこで,赤外光を用い,素子数を増加した4×4赤外光無線MIMOシステムの構築を行い,予備的な実験を行った. 多元接続方式においては,各子局の設置環境の違いにより信号強度差が発生し,強度の小さい方の信号が抑圧される遠近問題に対して,受信機にスレッショルドを適応的に設定するハードリミタ(HL)を導入するシステムを実際に構築,実験を行うことで,遠近問題下の特性の大幅改善が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,平成29年7月までに,光MIMO伝搬路測定項目決定,測定系概念設計,測定系詳細設計を行い,平成30年3月までに測定系製作,予備測定実験,測定系改良,測定実験,成果とりまとめを行う予定であったが,平成29年7月,測定系詳細設計の結果,当初計画の測定系では受信感度の不足により十分な伝搬測定精度が長距離伝搬路では得られないことが判明したため,光MIMO予備通信実験により必要な感度特性を明らかにし,光MIMO伝搬路解析により測定対象の性質の推定を行った上で,測定系概念再設計および測定系詳細再設計を行う必要が生じた.そのため,当年度の計画完了を12月末に変更し,予算の一部を平成30年度に繰越した.その結果,当初期待していた成果を得る事ができたため,研究の進捗は,「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,個々の素子にレンズを用いることで伝搬路行列の対角成分に信号を集中する高品質素子を用いた4×4高密度アレイによる実験を行う. 光無線MIMOにおいては,電波によるMIMOとは異なる特徴が伝搬路行列に存在する.計算機シミュレーションと実験の両面から,これらの特徴を明らかにする. また複数のアレイ素子に対して共通レンズを用いるイメージングMIMO方式についても検討を進める. 多元接続については,HLと干渉除去技術を組合せた受信機構成を考えその性能を検証する.
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