工場等における産業機器のための通信ネットワークを光無線技術によって実現する上で不可欠な基幹技術を確立することを目的とし,光無線MIMOシステムの研究を行い,さらにその多対多ネットワーク化を見据えて光多元接続技術についても研究を行った. これまでの研究で,伝搬特性を表す伝搬路行列の設計が可能であるという点が,電波によるMIMOにはみられない光無線MIMOの特徴であることを明らかにした.さらにこの特徴に着目し,光無線MIMOに望ましい伝搬路行列を検討し,従来の光無線MIMOで用いられている正方形を基本とした二次元のアレイ素子配置よりも,一次元の線形アレイ素子の方が特性が優れていることを見いだし,それを実験により実証した.その結果,通信速度20Mbpsにおいて通信距離50mでBER<0.001という結果を得た.これはLEDを用いた光MIMOとしては知る限りにおいて世界最高記録である.しかも,実験環境の制約でこの距離・速度であるがその制約がなければ理論上はさらに速度距離共に上回ることが出来ることも明らかにした. また,アレイ素子の個々にレンズを用いる従来方法とは異なり,複数のアレイ素子に対して共通レンズを用いる新しい方式(イメージングMIMO)の実験評価も実施した.その結果,対角行列に近い優れた伝搬路行列が得られること,従来型MIMOを上回る100Mbpsで50m以上の距離での通信が行える事を示した. 光無線MIMOにおいては,電波系とは異なり,線形処理で特定の信号を除去することは困難である.MU-MIMOシステムを光無線で実現するためには,電波系とは異なるアプローチが必要となる.そこで,光無線CDMAにおける干渉除去技術の適用について,実験により性能の検証を行いその実用性を明らかにした.
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