研究課題/領域番号 |
17H03271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片桐 崇史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90415125)
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研究分担者 |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内視鏡 / 蛍光イメージング / 圧縮センシング / マルチモードファイバ / インドシアニングリーン / 構造化照明 |
研究実績の概要 |
本研究は、光ファイバにより生成可能な構造化照明パターンと圧縮センシングによる画像再構成アルゴリズムを組み合わせた新規内視鏡撮像システムについて、その画質、スループットの照明パターン形状・空間周波数依存性に関する学理を究明し、超高感度内視鏡蛍光イメージング法の開発に資する普遍的な指導原理を確立することを目的としている。目的の達成に向け、本年度は以下を実施した。 マルチモードファイバにより生成した構造化照明パターンを実測し、その空間周波数が画質およびスループットに与える影響をシミュレーションにより検討し、以下の結論を得た。測定回数が十分に多い場合においては、照明パターンの空間周波数が撮像対象の空間周波数に近いときに最も良い画質が得られる。また、測定回数を少なくし、スループットを重視した場合には、空間周波数の高い照明パターンほど画質が劣化する。結果として、高スループットで高画質を得るためには大きな測定対象について比較的粗い照明パターンを適用する必要がある。シミュレーションでは、皮膚がんのモデルに対し、空間周波数0.02 cycles/pixelのランダムな照明パターンを用いることにより、64回の測定でPSNR = 25.7 dBの良好な画像再構成が達成されることが明らかとなった。一方、皮膚がんのモデルについて、公知の3つの圧縮センシングアルゴリズムを適用し、比較したところ、Total variationのL1再構成により画質が向上することを確認した。 上記シミュレーションの結果を受け、鶏肉の一部にCdSe系量子ドットを塗布した資料に対して実証実験を実施したところ、高感度な蛍光分光イメージングが可能であることを確認した。また、内視鏡に実装したシステムにおいて、臨床で有効なインドシアニングリーンの近赤外蛍光イメージの取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションにより良好な結果が得られたことにより、当初の計画よりも早く実証実験を実施することができた。一方、実験を優先するため、結果の数理的解釈については次年度以後に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的を達成するため、以下について検討を進める。 1. 小型内視鏡への実装:申請の小型CMOSイメージセンサを搭載した内視鏡を構成し、より実用に近いシステムでの実証実験を実施する。前年の基礎実験において、励起用ファイバは保持するモード数が少ないほど有利であるが、内視鏡に実装する場合、高NAが必要となるため、高NAでかつコア径の小さい特殊ファイバが必要であることが判明した。この新たな課題についてフォトニック結晶ファイバの適用を試みるとともに、ファイバ端のレンズ加工も含めた励起用ファイバの設計を行う。 2. スループットの限界についての調査:上記の内視鏡システムの感度を最大化することにより、スループットを決定する因子を突き止め、理論的な裏付けを行うことにより、限界の撮像時間を見積もる。安全基準以下のレーザ光照射により、60 fpsのフレームレートで20回の測定から充分な画質の蛍光像を取得可能であることを実証する。 3. 構造化照明パターンの最適化に関する数理:圧縮センシングの理論はNyquist-Shannonの標本化定理の一般化とみなすことができるので、標本化定理の理論に照射パターンのモデルを導入することにより、シミュレーションおよび実験の結果とつじつまのあう数理的な理論の構築を目指す。
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