本研究は,マイクロ波UWB(Ultra Wideband)レーダにおける生体医療診断及び治療のための,従来の空間分解能・精度を超える生体内部画像化法を構築することである.平成31年度では,乳腺組織とがん組織の複素誘電率の差異を識別するため,新たな逆散乱解析法(CSI: Contrast source Inversion)法を導入した.同手法は,順問題解析の繰り返し計算が不要であり,昨年度に導入したDBIMに比してその精度を保持しながら、約1000倍の高速化が可能であるために導入した。一方,同手法においてもデータ数が未知数に対して非常に少ないという不良設定性が問題となる.これに対して,CSIによる初期出力を用いて関心料理器(ROI:Region of Interest )を制限し,飛躍的に未知数を削減することで高精度化を達成した.同手法を3次元数値シミュレーション及び簡易乳房ファントムを用いた実機実験により,その有効性を検証した.また,同手法を応用することで,注目するべき領域にのみ未知数を多く割り当てることで,従来の2mmから0.5mmへの高分解能化も発展させることが可能となった。 またレーダデータの機械学習を用いたがん組織識別では,畳み込みオートエンコーダを発展させた深層学習により,がん細胞の有無のみではなく、その複素誘電率分布を推定する手法を導入し,数値シミュレーションにより、その有効性を確認した. またリアルタイムマイクロ波アブレーションモニタリング法においては,トモグラフィ法であるDBIM法を導入することでアブレーションによる複素誘電率分布を定量的に評価する手法も導入した.DBIM法は高精度であるが計算時間がかかるため,事前情報としてアブレーション前のDBIM画像を背景媒質として与えることで,1分以内のフレームレートで複素誘電率画像を更新することが可能となった.
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