研究課題
磁性ナノ粒子の磁気緩和(磁化の配向過程)は、癌温熱治療(ハイパーサーミア)における発熱量や磁気粒子イメージング(画像診断)における感度・分解能を決定する現象である。「細胞内や血液中での磁性ナノ粒子の磁気緩和機構を解明するための測定手法を確立すること」を研究目的としている。低強度・低周波数磁界で高発熱を示す磁性ナノ粒子の構造や粒径、凝集状態等の形態を明らかにするとともに、実用化レベルの画像診断性能に求められる磁性ナノ粒子の磁気特性及び印加磁界の条件を提示する。平成29年度は、磁性ナノ粒子の直流・交流磁化特性を測定する計測システムを構築した。直流磁化特性には、試料振動型磁力計を用いた。交流磁化特性は、励磁・検出コイルとそれらを駆動・検出する回路・機器系から構成される測定システムを用いた。液中に分散する微量の磁性ナノ粒子の交流磁化特性を高精度に評価可能な測定システムを構成することに成功した。磁気共鳴画像診断(MRI)による肝臓がん診断用に臨床使用されている造影剤であるリゾビストを測定する磁性ナノ粒子のサンプルとした。溶媒中に分散する磁性ナノ粒子は、磁化が回転するネール緩和に加えて、粒子自体が回転するブラウン緩和も生じることが特徴である。平成29年度の研究成果として溶媒中に分散する磁性ナノ粒子試料と、固体中に固定させた試料の動的磁化過程の差分を高精度に観測することに成功した。これにより粒子が回転するモードを初めて明らかにすることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
溶媒中に分散させた磁性ナノ粒子の磁気緩和機構において、これまでの理論モデルでは説明されていない動的磁化過程を見いだしたため、並びにこの知見が癌温熱治療(ハイパーサーミア)における発熱量や磁気粒子イメージング(画像診断)における感度・分解能向上に貢献するとの見通しを得たため。
溶媒中に分散させた磁性ナノ粒子の磁気緩和機構を探求するうえで、固体中に固定させた磁性ナノ粒子の動的磁化過程を対照させる必要がある。磁性ナノ粒子を固定させる過程において外部磁場を印加して配向させた固体試料を新たに作製し、その測定を進める。
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